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イスラム過激派テロ 仏教国日本にできること

2015年2月4日付 中外日報(社説)

道歌「分け登る麓の道は多けれど同じ高嶺の月をこそ見れ」(出典『一休骸骨』)は、仏道修行を積まずとも大意は分かる。悟りや真理に至る道は一つではないという趣意から、他宗教に対する仏教の寛大さも類推できる。融通性に富む日本人の信仰心、精神性は一神教の世界では奇異に映るというが、いわゆる「文明の衝突」がイスラム過激派のテロ続発という形で姿を見せ始めた感もある今、宗教的な寛容さは対立緩和に何か大事な役割を担えないものか。

過激派の中には後藤健二さんら人質を殺害したと誇示する残忍な「イスラム国」もある。この組織は仏教と並び他宗教に寛大とされるイスラム教とも無縁で、その異常さは理解を超える。ただ、イスラム主義武装集団の跳梁には忘れてはいけない重要なポイントがある。イスラエルの存在である。

例えばネット上で「アレクサンダー・ゲルスト」を検索すると、昨年7月にドイツ人宇宙飛行士が国際宇宙ステーションからパレスチナ自治区ガザを撮影した写真が見られる。暗い画面に点々と光が輝き「自分が撮った中で最も悲しい写真」「いくつもの爆発や(略)飛び交うロケット弾が見えた」と飛行士の注釈が付されている。

この時、地上では人口150万のガザ住民はイスラエルの圧倒的な空軍力で事実上無差別爆撃されていた。イスラム主義組織ハマスとイスラエルとの戦闘は2カ月続き、パレスチナ人の死者は2千人以上、うち400人余りは子どもで、避難民は50万人近かった。イスラエル側は67人が死亡した。

イスラエルの度重なる過剰な武力行使やガザの経済封鎖、ヨルダン川西岸での巨大な分離壁建設、国際法違反の占領政策等でイスラエルは「アパルトヘイト国家」と批判され、国際的に孤立化し始めている。だが、パレスチナ人が置かれた非人道的な境遇は改善されず、そのことが逆に過激派テロの追い風になっているといわれる。

そんな中で安倍晋三首相はイスラエルを訪問、それを狙ったかのように後藤さんら拘束の動画が公開された。筆者は一瞬、かつてのアパルトヘイト国・南アフリカから、最大の貿易相手国だった日本が「名誉白人」と呼ばれ、他国で冷笑されていた過去を連想した。

吹き荒れるイスラム過激派テロには中東の植民地支配など欧米に不都合な歴史の「負の遺産」という側面を拭えない。関わりがなかった日本は、命の尊重を基本に、しがらみなく衝突回避の道筋を示せる。万が一にも武力介入などを考えるなら、道に迷うだけである。