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政教分離の変化 法や行政の動きにも注視

2015年1月28日付 中外日報(社説)

『神道の逆襲』等の著書で知られる菅野覚明・皇學館大教授によれば、神道は自らの姿勢を国家の身の丈に合わせているという。それに従うなら、国家との関係はまことに単純明快だが、神道以外の宗教となると国家権力との関係は単純ではない。教義上の理由で異なった立場を打ち出さなければならないこともある。

文化庁宗務課はその単純ではない関係の中に身を置いてきた。戦前の宗教団体法の時代ならば宗務課の地位も明確であったが、戦後の宗教法人法のもとでは、宗務行政は政教分離という原則に照らして在り方が問われ続けてきた、といっていい。

GHQは占領政策で政教分離の観点から宗務課不要論を打ち出していた。GHQの意向を抑えたのは、宗教界の意見だったと伝えられる。宗教法人法が成立してからも、「宗務課は仕事しないのが仕事なのだ」というイメージがあり、それが「むしろ健全なあり方」(『宗務時報―宗務課百周年記念号』、竹村牧男・東洋大学長)と考えられてきた。

ただし、官庁としては多かれ少なかれ特異で、宗務課OBによれば、歴代の宗務課長は着任すると他の課とは勝手が違うため戸惑ったという。20年前の宗教法人法改定論議に際して、同法が「宗教法人性善説」に立っている(ので行政に制約がある)との批判的な言説がよく聞かれたが、その見方が流布した背景には「性善説では何も仕事=規制ができない」という行政側のいら立ちがある、と分析した研究者もいた。

宗務課にとって「仕事ができない」状況が改善されたのは、上記の法改定である。この時、宗教法人備え付け書類の所轄庁提出が義務化され、宗務課には新たに宗教法人室が開設された。

書類提出は大半の宗教法人にとって単に余分な仕事が増えた、という印象だったが、世間ではこれで行政が「正しくない」宗教を規制しやすくなる、と期待した人々もいたのは事実。客観的には、同法改定とともに、政教分離の実態が変化したとみるのが適切だ。

宗教法人法の三本柱(責任役員制度、認証制度、公告制度)のうち、宗務行政の根本となる認証制度も宗教法人設立規則認証の3年ルール(3年間の経過観察)定着などで実質的に変わってきた。

こうした変化は公式参拝問題などと違って目立たないが、政教関係の基本に関わるもので、実は重要な意味を持つ。国家の身の丈に合わせる立場でないならば、法制度や行政の変容にはもっと強い関心を持って臨むべきだろう。