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リニア新幹線で 急がないことこそ知恵

2015年1月23日付 中外日報(社説)

JR東海が昨年末、リニア中央新幹線の工事に着手した。一般向け試乗会も開かれ、「速さ」がひたすらPRされるが、報道によって問題も多く指摘されている。

環境影響評価(アセスメント)で6月に提出された「環境相意見」を見ると、まず南アルプスの地下を貫通する数多くのトンネル掘削で出る膨大な量の残土。5680万立方メートル、東京ドーム約50杯分もの処分先は、一部しか示されておらず、「意見」では「施設規模の見直しを含め発生量抑制の検討」を求めた。

また地下水も相当量が排出されるが、近辺の水脈、水源の枯渇の恐れなど「不可逆的な影響」の危険性が高い。工事に伴う生態系への負荷も心配で、計画路線周辺で確認されている希少猛禽類のオオタカなど動植物について、「意見」は「ユネスコエコパーク登録申請地の資質を損なうことがないように」とくぎを刺している。

これら以外にも、全線に電磁コイルを敷設して車体を浮き上がらせる強力な磁場を発生させることによる、電磁波の人体への影響は未知数。さらに、そのために消費する電力は、乗客1人当たりに換算すると既成の新幹線の3倍近いともいう。要は、環境面にもエネルギー面にもかなりのマイナスが考えられる、ということだ。

それに見合う、とされる「速さ」は最高時速500キロで、東京・品川―名古屋間が40分という。しかしだ、そんなに急いでどうするのか。全長286キロのうち、トンネルが86%も占め、列車は闇の中をひた走る。駅も改札などの設備だけ。景色や風情を楽しむという旅行気分などとは程遠い。

時間に追われるビジネスの客も想定されようが、彼らは航空機に慣れていようし、時代は既に人間の移動なしにインターネットなどで会議をするのが当たり前になっている。

果たして5兆4千億円という途方もない事業費に見合うだけの利用があるのか。それだけの巨費を被災地復興に一部でも回せば、とも思う。ところが、「欲望」の言い換え、つまり「経済効果」という掛け声ばかりが先行し、例えば計画にない京都市では「リニアを京都へ」と誘致運動が繰り広げられる。だが観光産業サイドから考慮しても、誘致などやめ、「古都へはゆっくりお越しやす」と言う方が未来的ではないか。

京都は宗教都市でもある。リニアとは「直線」という意味だが、悠久の時間を感じ、「少欲」という直線的ではない発想を備えているはずの宗教者は、どのように考えるだろうか。