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イスラームの原点は 女性を大切にしたはず

2015年1月14日付 中外日報(社説)

ユダヤ民族が苦しい旅を体験したことは、旧約聖書に記されている。「出エジプト記」によればモーセに引率された60万人は、エジプトの圧政を逃れて40年間、シナイ半島の荒れ野を移動した。「エズラ記」では「バビロンの捕囚」から解放された4万余人が、60年ぶりにエルサレムの都へ向かって歩みを進める。

ここで指摘したいのは、旧約聖書の数字が成人男子の数であるということだ。同行していたはずの女性や子どもの数は無視されている。ユダヤ教社会が男性中心であったことが分かる。

イエス・キリストの出現でキリスト教が成立した。同教を諸民族に伝え、世界宗教に発展させるきっかけをつくったのは、パウロである。パウロが各地の信徒に書き送った書簡14編は、新約聖書に収録されている。

この中でパウロは「教会で女性は、男性の言うことを聞いていればよい」とか「女性が男性の上に立つことを許さない」などと述べている。古代ユダヤ教社会の男尊女卑を継承した形だ。

この時代の宗教者は、周囲から迫害されることが多く、女性を前面に立たせる社会の形成が困難だったとも考えられるが、聖書に登場する女性は、良妻賢母か節婦型が多い。では、7世紀に誕生したイスラームはどうか。

1973(昭和48)年に始まるオイルショックの際、日本ではイスラーム社会への関心が高まり、中東産油国の要人だけでなく、イスラームのイマム(導師)らの来日が相次いだ。イマムらが力説したのは「イスラームは平和を愛するとともに、女性を大切にする宗教だ」ということだった。

「女子には相続権がないのが常識だった時代に、イスラーム社会では男子の2分の1の相続権を認めた。当時の世界では、画期的なことだった」と。また一夫多妻制については「開教当時のジハード(聖戦)では殉教者が続出した。生き残った男性たちが、遺族の生活を援助するための緊急措置だった」と説明した。

だが昨今のイスラーム社会では、女性軽視の現象が見られる。ノーベル平和賞を受けたパキスタンの17歳女性マララ・ユスフザイさんは、受賞スピーチで女の子の学ぶ権利の確立を訴えた。

このスピーチでマララさんは、まず「ビスミラー」と神を称え、続いてコーランの各章の冒頭にある「慈悲あまねく慈愛深きアラーの神の御名において」を唱えたという。世界の信徒がマララさんと共に、イスラーム開教の原点を再認識することを期待したい。