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新自由主義と権威主義 宗教は自由と自律尊ぶ立場で

2015年1月7日付 中外日報(社説)

2001年から8年間、アメリカをリードしたジョージ・ブッシュ大統領は熱心なキリスト教徒として知られた。時々強硬な宗教的立場が表に出る。イスラームを敵視するような発言が批判されることもあった。

アメリカでは「宗教右翼」集団が共和党の支持勢力として大きな影響力を行使する。ブッシュ政権ではそうした特徴が目立ち、聖書の権威を尊ぶ立場の国内政策や強硬な対外政策がリンクした。個々人の自律と心の自由を尊ぶ宗教者は、こうした政治と宗教の連携の在り方を警戒した。

遡って冷戦時代には共産主義と自由主義が対立し、宗教は自由主義と相性が良いものと考えられていた。個々人の自律と心の自由を尊ぶ宗教は社会主義に対抗し、市場経済とも自由・人権を尊ぶ政治勢力とも連携することができた。

ところが冷戦時代後、様子は変わってきた。グローバルな市場経済の自由を尊ぶ経済界と各国の政府が組んで、それぞれの利益を拡大しようとする。これが新自由主義だ。この新自由主義を支持する勢力は、政治的自由や自律を尊ぶ倫理性には共鳴しない。むしろむき出しの力による支配や外部への攻撃を利用する。そして、そうした政治姿勢は権威主義的な宗教や国家主義によって支えられる傾向がある。

アメリカだけでなく世界各国で、宗教や民族の「伝統」を掲げて、言論や思想・信条の自由を抑制する宗教右派勢力が力を得ている。イスラーム諸国やイスラエルの宗教的強硬派、またインドのヒンドゥー主義政党がその例だ。政治経済的な関心から新自由主義を推し進めようとする富裕層や財界と宗教・民族を攻撃的に掲げる勢力とが連携するのだ。

日本や中国ではどうか。どちらも国家主義的な伝統が強いが、戦前に「国体」を掲げてきた日本と、今、「共産主義」を掲げる中国に類比できるところがある。「国体」(昨今は「美しい日本」などと言い換えられている)や「共産主義」が、個々人の自律と思想・信条の自由を抑える方向に向かう。

こうした状況の下では、個々人の自律と心の自由を尊ぶ宗教は共産主義体制下と同様、批判派に回ることになる。世界各国でカトリック教会やプロテスタント教会が脱原発の側に与しているのは良い例だろう。自律や自由を尊び精神的価値を重んじる宗教勢力が、むしろグローバル経済の強化にさおさす新自由主義や権威主義的な宗教勢力・国家主義勢力と対抗するような思想地図が広がっている。