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将来が危ぶまれる選択 結局はマネーゲーム選挙?

2014年12月17日付 中外日報(社説)

富者はますます富み、貧者は一層苦しむ理不尽な世で、人全ての尊厳を守る公正な政治を総選挙に期待した。戦後最低の投票率、与党圧勝の結果でどうなるか。政治へのしらけムードが頂点に達する中、社会は亀裂を広げ、主流を外れた少数派の人々が軽視されていく。そんな懸念が募る。

スーパーで買い物をすると、生鮮野菜の見切り品コーナーでささやき合う老夫婦の姿がある。1円でも安い食材をと、折り込みチラシを見て何軒かの店を回る若い主婦も。日常、見慣れた光景だ。

一方、株式市場では日々、兆のカネが動く。本来「投機」は禅の言葉だが、近年の市場は飽くなき利益を漁るヘッジファンドなどの投機行為で健全さを失い、市井の生活感覚と無縁の魔界である。

荒々しいマネーゲームの世界で選挙前に日銀は上場投資信託購入額を3倍に拡大、政府は国民の老後を支える公的年金積立金の運用を変えて従来の倍以上の数十兆円を株式につぎ込むと公表した。決め言葉はアベノミクスである。思惑通り投票まで株価は好調に推移し、政権支持率を底支えした。

政治は倫理や道徳ではない。ただ、市場は海外の富裕層の資金を集めたヘッジファンドなどが売買シェアの6割を占める。日本は国民の1割強にすぎぬ貯蓄4千万円以上の世帯が総貯蓄額の44%を保有する(総務省)。株高で潤ったのは主にそうした層であろう。その陰で株式など無関係な資産ゼロ世帯が3割以上に上り、円安誘導による物価高に泣かされている。

拡大する富の格差は社会を分断する。非正規社員の急増、大企業と中小企業、年配者と若年層、大都市と地方、老後不安……。生活保護受給者は200万人以上で過去最高を更新し続ける。特定秘密保護法の施行や集団的自衛権行使容認の閣議決定、原発再稼働、近隣諸国との対立、沖縄の基地など安倍政権の強引な手法が平和憲法の根付いた社会に深い溝も生んだ。

選挙結果は政権の巧妙な選挙戦略、民主党などへの幻滅感、中国の脅威などの相乗効果だったにしても、目先の株高に踊る世情との相関関係は否めまい。

市場に戻ると、格差社会の米国では賃金抑制で富を貧困・中間層から富裕層に移すと株高になるという考え方があるという。過剰なマネーで市場は数年ごとにバブル崩壊するが、そのたびに企業は人件費を削減できる。怖いシナリオだが、日本も対岸の話ではない。

尽きぬ人の欲はいずれ破滅へと導く。今こそ欲望を抑制する宗教の機能が見直されねばならない。