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苦縁―東日本大震災 寄り添う宗教者たち
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「死者のホテル」 グリーフケアのために

2014年8月6日付 中外日報(社説)

死後事務や葬儀執行を生前契約で受託するNPOりすシステムが東京都江東区に設立した「りすセンター新木場」は「死者のホテル」とも呼ばれる。近親者が亡くなった時、遺体を冷蔵設備で長期に預かり、遺族がゆっくり「お別れ」をしながら葬儀の段取りをすることができる仕組み。安置室は殺菌灯やマイナスイオンで厳重な衛生・温度管理をし、納棺済み10体、未納棺27体が収容できる。

確かに、急な不幸の際は気持ちが動転している上、病院などでは遺体を何日も預かってはくれず、日程に追われ慌てて納得のいかないまま、業者任せの葬式をしてしまうことが多い。同センターは、生前契約者らのそんな声に応え、不都合な事態を回避する狙いで4年前に設立された。

遺族の面会は24時間可能で、夜通しで過ごす、いわゆる「夜伽」のための和室や、葬儀会場も併設されている。年間120体ほどの利用があり、中には喪主たる妻が入院中のため3週間預かった例もある。

つまり、単にシステムの問題ではなく、遺族の悲嘆に寄り添うグリーフケアを保障するものだということが肝要だ。

先般行われた見学会では、新たに導入されたAi(死亡時画像診断)装置が披露された。要はCTスキャンで遺体を断層撮影し、死因を精密に診断する。なぜそんな物が必要なのかと思われるかもしれないが、病院での治療の末の死でさえ、正確な死因が判定できないケースはかなり多く、「心停止」「呼吸停止」などとされる。

しかし、病理解剖にしても行政解剖にしても遺族の抵抗感は極めて大きい。警察が扱うような死因不明の「異状死」は年間17万人に上るが、解剖医の絶対不足もあって、解剖されるのは1割程度であり、事件性が見逃される例もある。Aiだと遺体を傷つけず、しかも解剖では分からない精密な知見も得られることが多いという。

病院の患者CT用を死者に使うわけにもいかないため、医療者からは自らの措置が医療ミスではないことの証明という需要があり、虐待や犯罪発見目的で司法当局からの受託も見込まれている。だが最大の目的はやはり、遺族が「不審な死ではなかった」と納得する「安心」であり、いわば「死者の人間ドック」だ。

そこにもグリーフケアの姿勢が共通している。エンディング諸相の在り方をめぐり、民間団体や葬儀社の方向性に宗教界から批判的論議が投げ掛けられることも多いが、このような動きもあることは知っておいた方がいいだろう。