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近づくカジノ解禁 負の側面に目を向けよ

2014年7月25日付 中外日報(社説)

刑法が禁止するカジノを合法化し、経済成長につなげようとする統合型リゾート施設(IR)推進法案が先の通常国会で審議入りし、早ければ秋の臨時国会で成立する見通しとなった。カジノ解禁にはギャンブル依存など社会へのマイナスの影響も大きく、慎重な議論が望まれる。

法案は昨年12月の臨時国会に超党派の議員連盟が提出した。カジノを中心とする巨大なリゾート施設を造って海外から観光客を呼び込み、地域経済振興の起爆剤にする狙いだ。

経済効果への期待から、すでに東京・大阪・沖縄など一部の地方自治体が誘致への関心を示している。その一方で犯罪や治安の悪化、青少年への悪影響など、社会への負の影響を懸念する声も根強い。日弁連は5月に法案への反対を表明した。

日本は約20兆円のパチンコ産業や競馬・競輪等の公営ギャンブルなど、市場規模では世界最大のギャンブル大国といわれる。しかし、そのマイナス面の予防や対策は諸外国に比べて遅れている。

2008年の厚生労働省の調査では、ギャンブル依存症患者は全国で約560万人と推計された。成人男性の9・6%、女性の1・6%が依存傾向にあり、全体で欧米など諸外国の1~2%という数字を大きく上回っている。

「周囲の人間が傷つく度合いにおいて、ギャンブル依存症を超える病気はない」との識者の指摘の通り、最も大きな影響を受けるのは子供や配偶者だ。親がパチンコに熱中する間に駐車場の車に放置された子供が死亡する事件は今も後を絶たない。ギャンブル依存者が多重債務に陥り、自殺や犯罪に手を染めるケースもある。

日本がIR推進のモデルとするシンガポールでは、観光客誘致を第一の目的として、自国民には年齢制限や入場税などの抑止策を設けた。依存症の危険を感じた場合は本人や家族が入場禁止届けを出すことができ、官民の専門家による依存症対策の公衆教育が行われている。それでもカジノを訪れる半数以上は自国民だという。

依存症患者への対策にかかるコストは大きく、国によってはカジノの増収分を上回るとの指摘もある。通常国会では推進派の議員から「カジノの収入で依存者対策を行う」旨の答弁があったが、本末転倒の考え方ではないか。

バラ色に語られる経済効果に踊らされず、マイナス面についての腰を据えた議論が必要だ。わが町にできるかもしれないカジノにどう向き合うのか。宗教者も問われている。