ニュース画像
多くの人が見守る中、彰義隊墓所で盛大に営まれた150回忌法要
主な連載 過去の連載 エンディングへの備え
苦縁―東日本大震災 寄り添う宗教者たち
購読のお申し込み
新規購読キャンペーン
紙面保存版

平和を守るために 忘却と闘わねばならない

2014年7月4日付 中外日報(社説)

「戦争は人の心の中で生れるものであるから、人の心の中に平和のとりでを築かなければならない」。国連教育科学文化機関(ユネスコ)憲章前文冒頭の文章は至言である。各種の平和の集いで度々引用されてきた。平和主義を国是とする日本が戦後初めて加盟した国際機関もユネスコだった。

ユネスコ憲章の平和の理念は国連憲章と響き合う。両憲章の関係は日本では教育基本法と憲法の関係に似ている、否、憲法9条があるから日本はより未来志向だといわれてきた。歴史の悲劇を踏まえた世界に誇れる貴重な財産だが、それが国権主義的な政権にあっけなく破壊されていく曲がり角に今、われわれは立ち会っている。

戦後すぐに結成された日本宗教連盟はユネスコ憲章に共鳴し、1947年に築地本願寺で「全日本宗教平和会議」を開いた。満州事変から始まる戦争を阻止できなかった悔恨を語り「日本が新憲法を制定して戦争を放棄し軍備を撤去したのは、過去の行為を反省し、世界に先駆けて不退転の決意をした(略)」などの「宗教平和宣言」を可決した。当時の高揚感をほうふつさせる文言があふれている。

先の大戦の犠牲者は8500万人ともいう。将来の戦争は億単位の犠牲者で、国際社会はその惨禍にとても耐えきれまい。それ故に国連憲章前文は「言語に絶する悲哀を人類に与えた戦争の惨害から将来の世代を救い(略)」と、次世代への責任を強調した。人の尊厳と武力の不行使が国連憲章の原則である。集団的自衛権と集団安全保障による武力行使は例外規定であり、例外措置を発動せずに済む世界が国連の理想なのだ。

その理想を教育、科学、文化の分野を通じて実現するのがユネスコの役割とされる。憲章の前文でユネスコが目指す平和は政治的、経済的な取り決めのみに基づくものではなく、「人類の知的及び精神的連帯」の上に築かれた永続的な平和なのだと主張している。

そのユネスコ憲章に擬せられた日本の教育基本法は2006年、第1次安倍政権による改定で平和憲法との理念的な関係が薄められ愛国心がうたわれた半面、日本の歴史への反省は霧消した。そして第2次政権での秘密保護法制に続く改憲手続き抜きの集団的自衛権行使=海外派兵の正当化である。こうして平和憲法は骨抜きにされていく。

「平和を守る闘いは忘却との闘い」という。政権の暴走は戦争の悲惨に対する国民全体の忘却が手を貸しているのだろう。心に平和のとりでを築く努力を怠ると、この国の行く末は本当に危うい。