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門主の法統継承で 家族と信仰の在り方

2014年6月20日付 中外日報(社説)

浄土真宗本願寺派で、門主の法統継承式が行われた。宗門にとって、課題が山積する中で今後の隆盛を期する重要な契機であり、若い新門主は「消息」などでさまざまに決意を語った。だが、各地から参列した8千人の僧侶、門信徒を前に、引退した前門主と共にそれぞれの裏方を伴って並ぶ父子の姿そのものが、現代社会における「家族」というものの一つの在り方を、身をもって示しているように見受けられた。

新門主があいさつで「教えを受け継いでこられた先人に感謝し、次の世代へ伝える」と述べたのは多くの伝統仏教、また新宗教にも共通する問題だろう。日本宗教界では「家の宗教から個の宗教へ」という論議が重要ではあるが、同時に宗教が家族のつながりを説くことも大事。「無縁社会」と言われる状況にあってはなおさらだ。

現代の家族の形はどうか。厚労省が先日発表した人口動態統計では、1人の女性が生涯に産むと見込まれる子供数を示す「合計特殊出生率」は1・43。総人口維持に必要な2・07にはるかに届かない。出生数は前年を7431人下回り102万9800人と史上最少。死亡数から出生数を引いた人口自然減は23万8632人と最大になり、今後も少子化と人口減が続くのは確実だ。

核家族どころか、子供がいない、あるいは「家族」とさえ言えない「お一人さま」世帯が増え続け、多数派になりつつある。経済格差など社会的要因による晩婚、非婚の増加という背景はあるものの、この国で「家族」が崩壊を続け、その価値が顧みられない恐れさえあることが分かる。

そのような中で、大家族、複数世代同居の家族からなる「イエ」を前提に、ずっと昔に形成された檀家制度に固執するだけでは、未来は見えないだろう。檀家制度は寺と檀家との結び付きの前にまず、檀家の家族の中で親から子へと信仰が語り伝えられていくということを想定しているはず。だが例えば、一般家庭で仏壇のある率は全国的に激減しており、そこから寺で仏像を見ても拝むことを知らない若者が増えているという。

状況を嘆くだけ、言葉で「家族愛」を説くだけでは問題は解決しない。これらの背景にある社会の諸問題を見据えた上で、家族や檀家というものの意味をもう一度捉え直すことが大事だ。新門主は子育てにいそしむ「イクメン」だという。前門からもかつて同じことを聞いた。法要で、信頼の絆で結ばれた門主父子に接した高齢の男性門徒が、幼い孫に念仏を教える様子がほほえましかった。