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国益や秘密の実体は為政者の恣意と虚妄

2014年2月4日付 中外日報(社説)

「特定秘密保護法」の執行に当たり唯一の外部機関となる情報保全諮問会議の初会合が1月17日に開かれた。諮問会議は、読売新聞グループ本社会長の渡辺恒雄氏が座長に就任し、学者、弁護士など民間人7人の委員で組織される。

秘密指定の基準が妥当かどうかを協議したり、政府から秘密の指定・解除の実施状況についての報告を受け、意見を述べることなどが諮問会議の役割だが、秘密保護法の制定に肯定的な新聞社のトップが座長に就いたことを問題視する向きもあるようだ。

諮問会議のメンバー、特に座長の人選もさることながら、同法が国会審議に付されると、憲法に保障された国民の知る権利や表現の自由を制限、侵害する恐れがあるとして、国論を二分するような激しい論議が巻き起こった。

反対する人たちが問題にしたのは、特定秘密を指定する権限が行政機関の長、実際には中央官庁の一部の官僚らに委ねられている点だ。「何が秘密に指定されたのかさえ国民には知らされない」との不安は今も払拭されてはいない。

国の情報は基本的に国民が共有すべきだとする人々の声に対し、政府や法律に賛成する人たちは、外交や防衛における国益を守るためには機密の保全は不可欠、と主張する。しかし、戦前・戦中、多くの国民は「国益」という美名の下で本来ならば知るべきことも知らされず、不自由な生活を強いられ、さらには生命、財産を失った人たちも少なくはない。

仏教の唯識には「一水四見」という物の見方がある。人間にとっては水でも、天人にはその上を歩くことができる水晶の床、魚には己の住処、そして餓鬼には炎の燃えさかる膿の流れ、というように、同じ物でも見る者によってまったく違った物に見えるというのである。

政府の言う「国益」とは一体何なのか。国民の基本的人権を制限しても守らなければならない秘密が果たして存在するのか。政府が「特定秘密」と主張する情報も、国民には、共有すべき情報としか思われないことも多々あるのではないか。諮問会議はそこまで踏み込んで秘密指定の基準を協議できるのか。

「三界は虚妄にして、但だこれ一心の作なり」(「華厳経」)

仏教では、外界の対象は実は心がつくった虚妄で、それらは実体としては存在せず「空」であると説く。

為政者の恣意に基づく「国益」や秘密に果たして実体はあるのだろうか。