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苦縁―東日本大震災 寄り添う宗教者たち
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母親の願い通じるか ノーベル平和賞求む

2014年1月25日付 中外日報(社説)

太平洋戦争開戦を報じた1941(昭和16)年12月9日の朝日新聞に「平和の希望遂に空し」「我生存を脅威・権威冒瀆」「米英の野望白日下へ」(原文まま)という見出しの記事がある。東亜の安定と平和に寄与する日本の外交努力を中華民国は理解せず、米英には妨害されてのやむを得ざる宣戦とする内容。20余年前、戦争当時の新聞報道を調べていて、あの戦争も「自衛と平和」を掲げていたかと妙に得心した記憶が残る。

歴史上、たいていの戦争は「自衛」「平和」を理由にした。侵略目的と公言する戦争などまずなかろう。だから近年の憲法擁護などの運動も、言葉で「平和」を唱和するだけでは工夫が足りない。そんな印象を拭えなかったが、先日、「面白い運動がある」と知人に教えられた。憲法9条に「ノーベル平和賞をください」とノルウェーのノーベル委員会に電子メールで署名を送る運動である。神奈川県の主婦鷹巣直美さん(37)が昨年1月から一人で始めたが、委員会への推薦資格のある大学教授らが協力、ネットで運動の輪が広がり現実味を帯びてきたという。

憲法9条は1項で戦争放棄、2項で軍備不保持を定め、国際社会の常識だった「軍備による平和」を捨て「軍備によらない平和」を選択した。安倍政権で一段と声高な改憲論の核心の一つは9条2項の破棄を企図したもの。だが、それでは戦争のできる普通の国になり、憲法が70年近く世界の平和と安定に果たしてきた計り知れない貢献を帳消しにしてしまう。

「平和賞を受賞すれば9条を守れる」とひらめいた鷹巣さんは、2児の母である。一昨年EU(欧州連合)が「ヨーロッパを戦争の大陸から平和の大陸に変えた」としてノーベル平和賞を受賞したことがヒントになった。一人こつこつメールを送り始めると、委員会から「授賞対象は個人か団体」と返事があり、主体を日本国民にして市民団体などに協力を求めた。

昨年8月に「『憲法9条にノーベル平和賞を』実行委員会」が結成され、一部地方紙にも紹介されて署名は1万3千人を超えた。署名はネットでできる。ネット上には「一人の力は小さいけれど、その小さな力が集まれば大きなうねりとなって世界を動かす」などの激励も寄せられている。

そういえば、54年の「第五福竜丸」被ばくを契機に生まれ、世界に広がった原水禁運動も口火を切ったのは東京・杉並区の小さな主婦の読書サークルだった。

署名運動の詳細は、同実行委(http://chn.ge/1bNX7Hb)へ。