ニュース画像
参列者が念仏を称える中、伊藤門主は1292霊の法名が記された御回向帳を1枚ずつ手繰った
主な連載 過去の連載 エンディングへの備え
苦縁―東日本大震災 寄り添う宗教者たち
購読のお申し込み
新規購読キャンペーン
紙面保存版

増え続ける児童虐待 社会全体で見守りを

2013年11月19日付 中外日報(社説)

児童虐待の増加に歯止めがかからない。厚生労働省が先月発表した統計では、平成24年度に全国の児童相談所(児相)が対応した児童虐待の相談件数は6万6701件。前年度より約11%増加し、過去最多を更新した。

件数は集計の始まった平成2年度以降、一貫して増え続けており、この10年間に2・8倍になった。社会的意識の高まりで通報が増えたという背景はあるが、通報に至らず公になっていないケースはなお多いと考えられる。

大阪市平野区の大念仏乳児院は、虐待や育児拒否などさまざまな理由で親と生活できない子どもたちを養育する。近年は25人の定員がほぼいっぱいの状況が続いているという。

運営する大念仏寺社会事業団の杉田善久理事長は「都市部は特に家庭の基盤が脆弱になっている。孤独な親も多い」、吉岡和代・副施設長は「背景が複雑化し長期でお預かりするケースが増えてきた。親を支援するための地域の見守り体制が必要だ」と話す。

和歌山市では先月、2歳の長男に暴行して死亡させたとして父親が逮捕された。父親は2年前に長男への傷害容疑で2度逮捕されたものの、いずれも起訴猶予になっている。児相は最初の逮捕後、長男を地元の乳児院に入所させたが事件の約2週間前に自宅に戻していた。父親らとの面会や外泊を数十回重ねた上で決めたという。この事件は捜査機関や児相の判断に問題は無かったのか検証の余地はあるが、一筋縄ではいかない虐待対応の難しさもうかがわれる。

生活の困窮や育児の孤立化など親への過剰なストレスは虐待の大きな要因だ。児相への相談が増加する中、職員数の不足も指摘される。経済面や育児の不安などを気軽に相談できる窓口を拡充するとともに、そうした場があることを周知していく必要がある。

同事業団は3年前、市の地域子育て支援拠点事業として、親子の集いの場「ドレミ」を開設した。地元の反響は大きく、今では毎日数十人、年間9千人の親子が訪れ、打ち解けた雰囲気の中で交流している。杉田理事長は「こうした場所を行政も確保しつつある。困ったら相談に行ってほしい」と呼び掛ける。

児童虐待の防止には社会全体での取り組みが欠かせない。11月は防止推進月間。標語は「さしのべた その手がこどもの命綱」だ。寺院や神社は地域コミュニティーの中核として、親子の姿を見守り、手を差し伸べ、虐待の芽を摘む力になってほしい。