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釈尊の教えと同様にヒロシマを語り継ぐ

2013年11月7日付 中外日報(社説)

「体験のない者が被爆者の境地に達するのは難しいですね。例えば、当時のひもじさを、今の私たちが本当に実感できるかどうか」と語る諏訪義円氏(41)。広島市中区大手町、浄土真宗本願寺派淨寶寺の副住職である。

広島市長の委嘱を受けて、修学旅行団体などに被爆体験を語る証言者は35人。今年5月現在で、平均年齢は80・7歳だ。遠からず、被爆者のナマの体験談は聞くことができなくなる。そこで広島市国際平和推進部は平成24年度から、語り継ぎ役の「被爆体験伝承者」養成講座を始めている。

年限は3年。太平洋戦争当時の国際情勢や原爆の構造、放射能の影響などの知識を学び、現在活動中の証言者の話しぶりを聞く。さらに、自分はこのように話したいとの草案を作成する。義円氏はその第1期生である。

かつて淨寶寺は中区中島町、現在の平和公園・原爆慰霊碑付近にあった。まさに爆心である。現住職の了我氏(80)は学童疎開で被爆を免れたが、両親はじめ全寺族が死亡。了我氏は親戚や門徒の協力で、寺を移転再興した。

同じ本願寺派で広島の寺に生まれ育った義円氏は「後継者に」と望まれて昨年、了我氏の養子になった。爆心にあった寺を継ぐからには、原爆を離れての教化活動はあり得ないと、伝承者養成講座の受講を決意した。

第2期生には、仏教者が2人いる。1人は中区十日市町、日蓮宗本覚寺副住職の渡部公友氏(42)。爆心に近い広島市立本川小の校区である。同小の平和資料館でボランティアのガイド役を務めたことで関心が高まり、今年度から受講した。

もう1人は中区八丁堀、真宗大谷派超覚寺住職の和田隆恩氏(46)である。在家出身で京都生まれ、大谷専修学院に学び、僧侶となった。広島で教化に当たるには原爆を知るべきだと決意した。知識としてだけでなく、心の底まで広島市民にならねばとの思いからである。口の重い門徒から体験談を聞き取ることもある。本覚寺、超覚寺とも、原爆で一時住職不在となった歴史がある。

「伝承者講座」の受講者は1、2期生合わせて176人。平均年齢は57歳という。その中で僧職の3氏が40代であるのは、貴重な存在だ。渡部氏は言う。「語り継ぐのは難事です。でも釈尊の教えは、弟子が代々語り継いだからこそ、今の世に伝えられた。被爆者の体験も必ずや語り継ぐことができるはずです」。その言葉に期待することにしたい。