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「貯蓄の日」に考える 貯蓄できぬ世の病理

2013年10月12日付 中外日報(社説)

10月17日は「貯蓄の日」である。戦後間もない昭和27年、日本銀行が記念日に制定した。勤労の対価としてのお金を大切にする趣旨で、伊勢神宮で毎年この日に行われる「神嘗祭」に由来するという。日本人の勤勉さもあって銀行預金や郵便貯金などに豊富な資金が蓄積され、企業への融資、財政投融資などの原資として戦災復興や高度成長に大きく貢献した。

しかし近年、国民の貯蓄性向を示す家計貯蓄率(世帯収入のうち消費に回さない部分の割合)が急落し、先進国で最低水準に落ち込んだ。さまざまな「負」の要因によるが、特に気になるのが貯蓄ゼロ世帯の増加である。貯蓄するゆとりのない人々が増え続ける社会は、健全であるはずがない。

家計貯蓄率は昭和50年前後に20%を超える高さを誇った。しかし、その後は低落が続き、特に平成10年以降の低下が顕著で最近は2%そこそこという状況だ。ドイツやフランスの10%台に遠く及ばず、イタリアや浪費国家ともいわれる米国の5%余(平成22年)をも下回っている。

低落の理由でまず挙げられるのが日本の急速な少子高齢化による貯蓄世代の減少だが、それだけではないようだ。厚労省の国民生活基礎調査によると、平均世帯所得が平成6年の664万円をピークに下降し、昨年の調査では548万円だった。毎年ほぼ10万円ずつ所得が減っている計算になる。所得300万円以下の世帯が3割を超え、6割以上の世帯が「生活が苦しい」と訴えている。

日本は「一億総中流社会」といわれた時代があったが、今は死語に等しく、多くの世帯が生活に余裕を失って貯蓄に回せない。日銀関係機関によると、昭和40年代初頭から平成7年ごろまで貯蓄ゼロ世帯(2人以上)の比率は毎年一桁だったが以来漸増し、昨年は4世帯に1世帯の割合にまで高まった。40~50歳代でも無貯蓄が少なくはなく、貯えのない世帯が定年を迎えたり職を失ったりしたらどうなるのか。考えると気が重くなる。消費税増税などで最も打撃を受けるのも、この層だろう。

その半面、個人の預貯金や保険・年金準備金、株式などを積み上げた家計金融資産は1500兆円を超えているという。所得格差の拡大と貧困化が同時進行していることをうかがわせる。

政府は株価上昇を弾みに成長戦略に必死だが、一方に貯蓄したくてもできぬ人々の暮らしがある。この不均衡を置き去りにしたままでは、社会の病状は悪化するばかりではないか。