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顧客としての群衆 消費される宗教に

2013年10月3日付 中外日報(社説)

少子化などの時代状況を背景として、今、大学など教育の現場では、学生やその保護者らを顧客と見なし、知識や技術、そして教養などを商品として顧客に提供するサービス業化が進行しているようである。

このような教育現場では顧客満足度がまず第一に重視される。町のレストランや喫茶店顔負けの豪華な学生食堂におしゃれなキャンパス。就職難の時代に何とか就職実績を上げようと、懇切丁寧な就職指導。

それだけではまだ足りない。テレビゲームにパソコン、そしてスマートフォンなど取扱説明書(マニュアル)付きの消費財に囲まれて育った最近の学生たちは、自分で一から考えるといった面倒なことは苦手だ。10年、20年先にようやく生きてくる学問や教養よりも、実用的な知識や技術を身に付ける学科、科目が歓迎される。

大学の中にはこのような学生たちの受けを狙ったような奇抜なネーミングの学部・学科を立ち上げて、人気が無いとみるや数年でまた別の名称に衣替えしている所もある。これなどは大学教育が商品、消費財と化しつつあることを如実に物語っている。

少子化の影響は社会のあらゆる分野に及ぶ。大学で起こっていることは宗教界にとっても「対岸の火事」では済まない。

少子高齢化や過疎化の影響で教線衰退の一途をたどっている伝統仏教教団は、何とかこの劣勢を挽回しようと、大都市部でこれまで宗教と縁の薄かった若者や大量退職時代を迎えた団塊の世代をターゲットに信者を増やそうとさまざまな取り組みを始めている。

書店に次々と並ぶ宗教書。占いやパワースポットに群がる若者。何度目かの「宗教ブーム」と呼ばれるような世相を追い風に、各教団は公開講座や文化事業、出版などでまず人々と縁をつなごうとしのぎを削っている。

しかし、ブームの背景にある宗教に対する関心は、自己啓発や教養を深めたいという動機にとどまっている、との指摘もある。消費者が商品を選ぶように、それぞれの教えのおいしい部分、自分に都合の良い部分だけをつまみ食いするようなものとの見方もある。

いきなり深遠な教義を押し付けても敬遠されるだけで、まずはイベントなどを入り口に、という手法も、むろん間違いではない。ただ人々の宗教的な関心の裏側にある本質をしっかりと見極め対応しないと顧客の要求に振り回され、消費されるだけの宗教になりかねない。