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差別への同情超え共感による行動を

2013年9月21日付 中外日報(社説)

「いらっしゃい。ゆっくりしてください」。落ち着いた声で店の奥から出てきた中年の男性店主はだが、上がりかまちの板の間にはいつくばり全身が激しく痙攣し続けていた。過日、信州奈良井の宿を旅した際、特産漆器などを売る土産物店に入って衝撃を受けた。

重度のパーキンソン病。脳内の神経伝達物質が不足する難病で、根本的治療法はない。だが店主は「これどうぞ」と言うと、のたうち回りながら不自由な手に筆を持ち、色紙に絵を描いてくれた。大きく震える上半身が気合のように一瞬ぴたりと止まる瞬間に、さっと筆を滑らせる。一筆ずつ時間をかけてではあるが、とても穏やかな表情の地蔵像を完成させ、前掛けには朱で彩色もした。

その味わいに感心するとともに、十数年も闘病を続け、症状が進行する中で、地域のために観光の村おこしにも尽力した話を聞いて胸を打たれた。その姿は、障害への「同情」とは次元の違う尊敬の念を抱かせるに十分だった。

NHKのEテレに「バリバラ」という番組がある。障害者をめぐるさまざまな事柄を障害者自身が取り上げる。先日は、「障害と笑い」。難病による体のまひでベッドに寝たきりの男性芸人がドタバタを演じ、頭を「はりせん」でたたかれては冗談ぽく「障害者をどついていいの?」と。芸自体はお世辞にもうまいと言えないが、その前向きさはすごい迫力だ。

義足の女性は片足を外して首に当て、「ひとり膝枕!」という瞬間芸を見せた。思わず吹き出してしまうが、素直に笑っていいのかどうかためらい、考え込むところが番組の狙いだ。健常者らも含めた会場の人々にじっくり意見を聞く。「バリアフリー・バラエティー」の題名どおり、障害に対する心の中の障壁を乗り越え、同情ではない相互理解を模索する。

以前見た、在日朝鮮・韓国人の苦難の歴史を主題にした演劇「百年 風の仲間たち」では、「『在日コリアン』なんて、なんで英語で呼ばれなあかんねん。気色悪いし、事なかれ主義のにおいに虫酸が走る」「障害者を差別する重度健常者」という、大阪・猪飼野の在日青年のラディカルで痛快な台詞が印象的だった。

さまざまな差別と、その裏返しの特別視、表面的な「同情」を克服して初めて築かれる対等な関係による連帯。万人の平等を謳う宗教は、行いを通してそれを目指しているのではないか。土産物店主の差し出してくれた色紙には、地蔵の傍らに「佛心」の文字が鮮やかに躍動していた。