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原発事故問題を抱え歩む東京五輪への道

2013年9月12日付 中外日報(社説)

7年後のオリンピック・パラリンピックの東京開催が7日、アルゼンチン・ブエノスアイレスで開かれたIOC総会で決定した。東京都民の地元招致支持も7割を超えていたとされており、日本国内のメディアの第一報は、政治的立場を超えてまずは歓迎の一色だ。日本をアピールした招致活動がIOC委員から評価され、東京が開催地として選ばれたことは、「福島原発事故後」のわが国にとって喜ばしいことである。

昭和39(1964)年の東京オリンピックの雰囲気をよく覚えているのは、50代半ば以降の世代だろうか。これから生まれてくる子どもたちも含め、将来を担う若者たちにとって、2020年のオリンピックは生涯記憶に残るに違いない。社会全体もこれからオリンピックという目標を視野に置いて動いていくことになるだろう。

ところで、東京招致に効果があったのは、総会の最終プレゼンテーションだったと伝えられる。中でも、安倍晋三・総理大臣が世界から注目されている福島第1原発の汚染水流出問題で、環境への影響を否定し、事故後の原子炉の状況を統御していると確言したことは大きな意味を持ったようだ。

安倍総理のこの発言に、脱原発依存を訴えてきた宗教者を含め複雑な感慨、あるいは反発を感じた人も少なくないだろう。原発周辺住民は、今も郷里へ戻る期待を持てないまま避難生活を送っている。原発事故の正確な原因はまだ分かっていない。汚染水は増え続ける一方で、処理方法はめどが立たない。民主党政権下で行われた収束宣言に強い違和感を抱いた人々は、安倍総理の「統御」説にも到底共感することはできまい。

もっとも、オリンピック開催地が抱える原発事故の影響というリスクは、安倍総理の一言で忘れ去られるわけではない。国内はもちろん、海外からの注目はオリンピック招致成功でかえって高まるだろう。安倍総理は原発問題解決という極めて重い国際公約を行った。この公約が実現されることを、日本だけでなく世界の人々が強く期待している。

幻に終わった昭和15(1940)年も数に入れれば3度目の東京オリンピック招致。73年前は急坂を転げ落ちるように戦争へと向かっていった「時代」を引き留めることができなかった平和の祭典だが、福島原発事故や近隣国との関係悪化、さらにいえば日本国内の国家主義的傾向の兆候という危険を乗り越えて、オリンピックが世界に開かれた日本をつくる跳躍台になってほしい、と切に願う。