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オウム事件の忘却を防ぐため努力が必要

2013年7月30日付 中外日報(社説)

平成7(1995)年3月のオウム真理教による地下鉄サリン事件から18年余が経過した。事件が起こった年にオウム真理教は宗教法人としては解散させられた。

しかし信者たちの活動は続き、教団の名称は12年にアレフと改称された。その後にアーレフ、20年にAleph(アレフ)と改称が続くが、その間に教祖回帰が次第に明確になってきた。最近では各道場に麻原彰晃の写真が堂々と掲げられているようだ。

一連の事件をあまり詳しく知らない若者が新たに入会する例も増えている。サリン事件を体験した世代にとっては、あのような事件を起こした団体が活動を継続しているのみならず、新たな信者を獲得していることは理解しがたいかもしれない。19年にアレフから分かれて「ひかりの輪」を設立した上祐史浩氏は、インターネット上で説法を公開し、メディアにも積極的に登場している。

事件の風化で、若い世代がサリン事件に特別な感覚を持ち得ず、またオウム真理教とアレフの関係があまり分からなくても、やむを得ない面がある。物心つかぬうちに起こった事件に対して、リアルな感覚はなかなか持ち得ない。

問題は1990年代前半のオウム真理教の活動や地下鉄サリン事件をはっきり認識している世代にある。事件以前にオウム真理教についていろいろ論じたマスコミ、研究者、評論家等の一部が、極めて杜撰な事実認識であったことは、宗教情報リサーチセンター編『情報時代のオウム真理教』(春秋社)を読めば一目瞭然である。このことに対する反省が不十分であり、さらに言えばこのことを忘却しようとさえしているような気配さえ感じられることがある。

最近のアレフの勧誘は、最初は正体を明らかにしないことが多いようだ。これは「カルト宗教」という言い方で社会的に批判されることの多い教団に、比較的共通して見られる点である。

インターネットを通しての情報が急速に大きな比重を占めるような時代に、若い世代に適切な情報を与えていくのは、極めて困難な状況になっている。とはいえ、過去に悲惨な事件を起こした教団について、そのことを認識する機会すら設けないのは、教える世代の怠慢と言わざるを得ない。

この点では宗教家、宗教研究者がとりわけ重い責任を有していることになる。宗教活動一般の批判に陥ることなく、何が社会的批判の対象になるかの境界線を考えるに際し、これら専門家は深い認識を蓄えるべきであるからである。