ニュース画像
「誠」の隊旗を掲げた五重塔院で営まれた法要
主な連載 過去の連載 エンディングへの備え
苦縁―東日本大震災 寄り添う宗教者たち
購読のお申し込み
新規購読キャンペーン
紙面保存版

孔雀の羽で身を飾る烏にはならぬように

2013年6月27日付 中外日報(社説)

最近よく使われる言葉に「ファーストフード」がある。調理せず手早く食べられる食品のことだ。しかしファーストというとfirstと紛らわしいからか、新聞等ではファストフードと表記される。ところがファスト(fast)とは英語の名詞では断食のことである。朝食をブレークファストというのは昨晩からの断食期間を中断するからである。だからファストフードといえば、断食食品という妙なことになりかねない。

テレビの討論会ではある評論家がしきりに「これとあれとではどちらがベストでしょうか」と繰り返していた。正確にはベターであることは中学生でも知っている。ついでながらテレビでもワーストワンという言葉が頻用される。最悪の二つのことをワーストツーというから、最悪はワーストワンで、その反対がベストワンだと思うらしい。言うまでもなくベストもワーストも通例は一つであって、わざわざベストワンとかワーストワンとか言うことはない。

例はまだある。「この問題にスポットを当てる」という言い方をする人がいる。当人は「スポットライトを当てる」の省略のつもりなのだろうが、スポットとは特定の、通常は広からぬ場所のことだ。最近流行のパワースポットなどという場合の場所のことである。だからスポットを当てるでは何のことやら分からない。せめてライトを当てると言ってほしいものだが、光を当てると言ってはどうしていけないのだろうか。

英語が世界の共通語となりつつある現在、英語が日常的に使われるようになるのはやむを得ないことではある。実際、英単語をそのまま翻訳せずに使っているのは日本人だけではない(中国人は、コンピューターを電脳というように、外国語を全て翻訳しているようだが)。だから、ソフトとハードをわざわざ「やわもの」「かたもの」などと翻訳する必要はないし、同じstrikeをストライクとストライキに使い分け、違う語の省略形をインフラ、インフレ、インフルなどと使い分けているのはなかなか傑作ですらある。

問題は日本人が日本人に語るときに日本語で言えることをなぜわざわざ英語で言いたがるかという点にある。イソップ物語に孔雀の羽で身を飾ったカラスが鳥たちに軽蔑されたという話があるが、日本では破損した孔雀の羽で身を飾っても孔雀として通用すると思っている人がいるようだ。というのは言い過ぎだが、英語を使うなら――英語だけではないけれど――正確に使ってほしいものである。