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日韓関係が厳しい今 宗教家は橋渡し役を

2013年6月20日付 中外日報(社説)

2002年のFIFAワールドカップの日韓共催、翌年の「冬のソナタ」の大ブームなどで、21世紀の日韓関係は好転に向かったかに見えた。実際、両国の文化交流なども以前に比べて極めて幅広く、そして多様になった。

宗教関係者、あるいは宗教研究者の交流も着実に深まってきている。相互の歴史や文化に関する理解のルートは、太く確実なものになりつつある。

しかし、最近は竹島問題や従軍慰安婦問題など、従来から重くのしかかっていた問題が、再び両国の関係にマイナスの影響をもたらしている。そうした中、昨年来話題になっている長崎県対馬市の仏像等の盗難事件にまつわる出来事は、宗教が直接的に絡んでいるだけに、これがこじれないように、宗教関係者もさまざまなルートを通じ努力する必要があるだろう。

事件の発端は、昨年10月に対馬市内にある海神神社や観音寺などから、仏像と仏教経典の一部が盗まれ、これらの盗難品が韓国で見つかったことである。程なく韓国人の窃盗団の仕業と分かったが、その後の展開が事態を非常に厄介なものとした。

というのも、これらの盗難品のうち、長崎県指定の有形文化財「観世音菩薩坐像」に対して、韓国の裁判所によって日本への返還を当分差し止める内容の仮処分決定が出されたからである。

韓国の浮石寺が、この「観世音菩薩坐像」は14世紀に同寺で鋳造された記録があると主張し、韓国政府を相手に移転禁止を求める仮処分申請を、大田地裁に対して行ったためだ。

日本側には驚きをもって迎えられたこの申し立ては、韓国側のある認識に基づいている。つまり日本は多くの仏像を朝鮮半島から略奪したので、これを韓国に取り戻すのは当然であるという考えである。むろん、日本側にそのような認識はない。多量の朝鮮半島の文化財が日本に渡った経緯についてはほとんど不明、というのが実情なのである。

東アジアは古くから仏教をはじめ相互の信頼に基づいた人や文物の交流によって、それぞれの地に豊かな宗教文化が育まれてきた。日本と韓国の宗教文化に多くの類似性が観察されるのは、その当然の結果というべきなのだ。

こうした大きな流れを重視するならば、今回のような問題が、相互の関係悪化に作用するのは非常に残念なことだ。すでに確立されている宗教的交流のパイプは、こうしたときにこそ有効に生かしたいものである。