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世界文化遺産指定へ期待が高まる富士山

2013年6月4日付 中外日報(社説)

長年の懸案だった富士山の世界遺産登録がいよいよ実現しそうだ。イコモス(国際記念物遺跡会議)が、世界遺産一覧表への「記載が適当」という勧告をユネスコに対して行ったことを踏まえ、16日からカンボジアのプノンペンで開かれる第37回世界遺産委員会で「記載」されるかどうかが決定される。

記載が決まれば、日本国内では17件目、文化遺産としては13件目だ。イコモスが「三保松原」の除外を勧告したという問題がまだ残されているが、2年前の6月に自然遺産として小笠原諸島が、文化遺産として平泉が世界遺産に指定されて以来の朗報となる。

「名山としての景観」だけでなく、富士山には信仰の対象や芸術の源泉として、総合的に見て「顕著な普遍的価値」がある、という点が政府の世界文化遺産推薦理由。文化庁の資料によると、世界遺産を構成する25の「構成資産」として、山頂の信仰遺跡や北口本宮冨士浅間神社、富士山本宮浅間大社などの神社や御師住宅が「富士五湖」等と共に挙げられている。富士に関わる宗教文化が、「芸術の源泉」としての価値と共に、世界が共有すべき普遍的価値を持つと評価され、文化遺産登録が可能になった意味をあらためて重視したいと思う。

例えば、150万人近い市民が生活し、毎年およそ5千万人の観光客を迎え入れる京都では、平成6年に17の寺社などで構成する「古都京都の文化財」が世界文化遺産に指定された。

歴史都市・京都は、開発か保護かという葛藤を長年抱えてきたが、指定以後はいっそう自覚的に、世界遺産本体周辺の景観・環境バッファゾーン(緩衝地帯)などの課題に取り組むようになった。これとともに、市民の側でも伝統文化を守るモラルが育まれてゆくなら、世界遺産指定の喜ばしい効果ということができるだろう。

富士山は自然遺産としての登録を断念した経緯がある。不法投棄や、登山者が残すゴミの問題などがあるといわれるが、小笠原諸島とか知床のような大都市圏から隔絶した自然遺産と同レベルで環境を保護するのは、富士山の場合そもそも難しいかもしれない。

文化遺産は多くの人々がそれを尊重する意識を持ち、後世に伝える努力をすることで初めて守られる。富士山も同様だ。世界遺産指定への動きが、富士山をめぐる環境の改善と、伝統文化を守る意識の向上につながってゆくことを期待したい。