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苦縁―東日本大震災 寄り添う宗教者たち
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"フクシマ"を契機に活発化した平和学習

2013年6月1日付 中外日報(社説)

「新任校に着任しました。学級担任なので、5月には修学旅行に同行します。広島です」。西日本で中学校教師をしているAさんから転勤挨拶状が届いたのは、4月中旬だった。

5月、広島市在住のBさんから便りがあった。「修学旅行のシーズンです。昨年、今年と広島を訪れる学校が増えたようです」。元教師だけに、児童や生徒の姿が、目に付くようだ。

修学旅行団体に広島の体験を語る被爆者の中には、自らを"証言者"と名乗る人が多い。その一人で、80歳の元ジャーナリストのCさんが言う。「今年の5月には1日置きに"証言"をしました。こんなに多くの要請を受けたのは初めてのことです。体力的にきつかったけれど、若い諸君に平和の大切さを訴え続けました」

ひところ、教育界の一部では、平和教育に熱心な教師を政治的な視線で見る風潮があると伝えられた。修学旅行の行き先を広島・長崎から名所・旧跡や観光地に変更する動きもあった。

しかし、旅行業界の事情通によると、東日本大震災以後は福島第1原発事故の影響で核問題への関心が高まり、被爆地訪問を選ぶ学校が増えたそうだ。

ところでCさんによると、広島では各校の付き添い教師に、二つのパターンが見られるという。児童・生徒と共に熱心に"証言"を聞き、涙を浮かべる教師がいる。その一方では後ろの席で居眠りしたり、部屋の外に出てたばこを吸ったりの教師もいる。

「修学旅行の先生方は、事故が起こらぬよう緊張し続けているため、無理からぬ点もあると思いますが……」とCさん。

"証言"が終わると、児童・生徒の代表から「お礼の言葉」がある。事前に教師が教え込んだ型通りの謝辞よりも、言葉に詰まりながらCさんの体験談のどこに感動したかをフリートークで語ってくれる方がうれしい。

旅行を終えた児童・生徒からCさん宛てに、分厚い感想文集が送られてくることがある。自分の訴えがどう受け止められたかが、よく分かり、参考になる。だが感想文の届く割合は、年々低下しているそうだ。教育内容の変化で、教師も児童・生徒も忙しくなっているのだろうか。

数年前、校紀の乱れていた関西の高校生が広島への修学旅行で被爆者の"証言"を聞いてから気風を一新、ボランティア活動に励むようになったという。"証言"には、法話のような影響力を発揮することがあるようだ。