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「ビジネス」もまた宗教文化理解の場

2013年4月20日付 中外日報(社説)

中国との関係があまり良くない状態が続いていることが一因と考えていいだろうが、観光関連の産業では、東南アジアからの観光客への期待が大きくなっている。実際に少しずつ来日する人が増えつつあるようだ。

東南アジアにはインドネシア、マレーシア、ブルネイなど、イスラーム教徒が多数派の国がある。またタイ、ミャンマーなど上座仏教徒が多数派を占める国もある。

こうした国々からの団体観光客を招致するときには、宗教に関する基礎的な素養を求められる場合が多くなる。イスラーム圏からの観光客であれば、ハラールについての知識を欠かすわけにはいかない。礼拝の場所を確保することについても考慮した方がいい。上座仏教圏からの観光客であれば、上座仏教と日本仏教との基本的な違いを説明できた方がいいだろう。

すでにテレビなどでも紹介されているが、ハラール食品を提供するために、いろいろな工夫をしている企業もある。前の人が何を食べたか気にしなくていいように、使い捨ての食器を用意する所も出てきている。あるいは新千歳空港のように、イスラーム教徒に配慮して、礼拝のための部屋を設置した例もある。

団体で訪れる人々は、個人で訪れる場合よりも、自分たちの宗教の戒律や儀礼について、より強く意識するのがふつうである。戒律が社会的に維持されてきたことを考えるなら、こうなるのは自然なことといえる。団体客を受け入れる場合には、個人での客以上に相手の宗教文化に配慮した方がいいといえるだろう。

海外からの来訪者増加はビジネスチャンスとして捉えられがちである。テレビ報道などもその視点からのものが多い。むろん、そういう側面が大きいことは言うまでもない。ただそれと同時に、こうした配慮が相互の宗教文化の理解に至る一つの道であり、かつその最も身近な例であると意識することが重要である。

宗教的な施設で行われる儀礼に対して関心を持ち、それに配慮することは大事なことであるが、日常生活の場に表れる宗教的な儀礼や戒律などにも、より深い配慮を持つべき時代になったと考えるのがいいだろう。

宗教とビジネスを聖と俗とに対比して考えることができるのは、むしろ限られた局面で、多くの宗教文化は日常生活の中で多様な姿をとっている。ビジネスの場も、互いの宗教文化のよき理解の場になるという、逆転の発想のようなものが求められている。