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共同体形成の前提とコミュニケーション

2013年2月9日付 中外日報(社説)

コミュニケーションとは「合意形成に至る意思疎通」というような意味で使われる。しかし、原語の語義は単純ではない。

コンとムーニオからなるラテン語のコンムーニオは、元来何かが共有されている状態のことで、だから情報や意思の共有のことでもあるのだが、共同体の意味にもなる(英語ではcommunity)。接頭辞のコンは「一緒に、共に」ということで、現在でもラテン語系の英語に多く見られる。

不思議なのはムーニオで、動詞としては「壁で囲む、保護する」ということで、名詞のモエニアは城壁を意味する。他方、ムーヌスという重要な語があり、これは「贈り物、責務」という相反する意義を持っている。

一つの語がこの両者を表しているということは、贈り物とお返しとがセットになり、また贈り物をし、お返しをするのは義務であるということだろう。実際、「誰かが支配者である」ことと「被支配者がそれを進んで承認する」という両方をセットとしてムーヌスといわれる例がある。

するとコンムーヌスとは「贈答が義務として共有されている」ということである。「交換」と言ってしまえばいささか抽象化し過ぎていようが、要するに一方的な支配や搾取ではない相互性、つまり贈答や等価交換が義務として共有されている状態がコンムーニオで、それは他ならぬ人間共同体の事柄なのである。他方、モエニアは城壁だが、動詞コンモエニオは砦で囲む、保護する、強化するという意味になり、ややこしいことに、これはコンムーニオ(動詞)ともいわれ、上記のコンムーニオ(名詞)とは、意義の上で違っているのに、字は同じなのだ。

これ以上の語学的な詮索はやめにして要約すれば、ある場所を砦や城壁で囲むことは、そこに都市をつくることであり、この城壁――共有された城壁――の内部では交換の相互性が義務として共有されているということになろう。すなわち外に対しては壁で身を守り、内部では等価交換が義務となっていることである。

こう言ってもよい。共有とは、一方では外部に対する「壁」を共有し、他方、内部では相互性を義務として共有することである。これはまさしく共同体の事柄だから、コミュニケーションとは元来は共同体形成のことである。よく「コミュニケーションをとる」という使い方がされるが、本来、コミュニケーションとは単に「連絡を取る」というだけのことではないと理解しておくべきだろう。