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原発事故なお恐怖 実効性ある対応を

2013年2月7日付 中外日報(社説)

若い恋人同士が愛をささやき合っている、まさにその時、けたたましい警報が鳴り響き、人々が恐怖に慄いて逃げ惑う。原発事故による大量の放射能が風に乗って町に降り注ぎ、避難する住民で一大パニックが起きる。

これは、ドイツの映画「みえない雲」のシーンだ。同名の小説が2006年に映画化されたものだが、当然ながら鑑賞していて東京電力福島原発事故の現実と重なり、慄然とした。

朝食中に警報で公民館に集まるよう指示され、茶碗と箸を卓上に置き、取りあえず寒さしのぎに毛布をかぶって家を出たまま二度と戻れなかった住民、逃げられず自宅で餓死した寝たきり患者もいる。そう訴えた南相馬の病院副院長は、診察のためとどまって内部被ばくしたことを打ち明けた。

小説はチェルノブイリ原発事故の翌年、1987年に出版され150万部のミリオンセラーになったという。原発推進派からは誹謗されたが、学校教材にもなり、日本も含め多くの国で翻訳された。映画もドイツで賞にノミネートされ、この両者と身近なチェルノブイリ事故で怖さを知った同国の国民が、フクシマをきっかけに「脱原発」に舵を切ったという流れがあるとされる。

映画では政府が速やかに避難指示を出し、臨時病院を設営するなどで被ばく者への医療措置も講じられる。だが、日本では「原子力村」の学者や政府が「直ちに危険はない」と繰り返し、放射線量の多い風下へ住民が誘導された。後になって県民に追跡調査用に携帯線量計が配られたが、「データ収集だけで何の手当てもないなら、私たちはモルモットだ」との怒りを被災地で数多く聞いた。

主人公たちは被ばくで重症になり、混乱の中でその母親や幼い弟が事故死する悲惨なシーンが映画にはある。福島では避難を強いられた高齢者や病人が次々亡くなり、自死者も今なお相次いでいる。放射性セシウムが検出された子供たちに今後、どんな悪影響が出るかは予想がつかない。

にもかかわらず経済界やそれに近い大手メディアは「脱原発は非現実的」と再稼働を言いたてる。この映画は、そのような流れに抗して国民投票提案など脱原発キャンペーンを続ける通販カタログ会社が、最近号に付録としてDVDを付けた。ちょっとした草の根運動だ。臨済宗妙心寺派が先般、研究会開催なども含めた「脱原発推進費」の予算化を打ち出した。宗教界も、アピールだけでなく実効性のある取り組みが急務だ。