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苦縁―東日本大震災 寄り添う宗教者たち
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減少もなお多い自死 原因作る社会変革を

2013年2月2日付 中外日報(社説)

1998年以来、14年連続で年間3万人を超えていた自死者数が、昨年は2万7766人と久しぶりで大台を切った。前年比9・4%減とかなりの改善で、この警察庁統計を報道する各紙は、国などがリードした自死防止策が奏功したと一定の評価をしている。

確かに減少は好ましいことであり、2006年に施行された「自殺対策基本法」の効果が表れてきたとはいえる。各地の自治体は、自死を考える人への相談の仕組みや、講演会やPR活動などさまざまな啓発にも積極的に取り組んできた。自死の予兆を発している人を早期に発見してケアする「ゲートキーパー」を地域の住民の間で養成する市も増えている。

だが、見過ごしてはならないのは、各地で実際に自死念慮者や遺族に対応する「いのちの電話」をはじめとする多くのNPOなどの民間団体の活動だ。その数はこの間に飛躍的に増えており、文字通り現場でマンツーマン、パーソナルサポートの形で、悩み苦しむ人々に個々に親身に接し、いのちの叫びを受け止めたり、困り事の相談や解決に携わったりしている。

同法制定に働き掛けたのもこれら民間団体であり、先のゲートキーパー養成でも、京都市では仏教者らが運営する団体に市が協力を求める形で、宗教者を対象に研修活動などを展開している。

宗教者も関わるこれらの民間団体は、今回の自死者減少をもちろん歓迎はしているが、「現場で行われている支援を少しでも緩めれば自死者はまた増えていく」と警戒もしている。現実に、自死防止につながっている相談の件数自体は最近も増加し、3万を切ったとはいえ総数はやはり多いのだ。

しかし、行政などがそのような活動の支援策を充実することと同時に大事なのは、自死を生み出す原因をつくるようなこの息苦しい社会を少しでも良くすることだ。例えば、全体の減少の中で被災地の宮城県では増加し、その増加数も全国トップ。少し前に内閣府から発表された「震災関連自殺」統計でも、年代層は50~60代、原因は「経済・生活問題」「健康問題」が非常に多い。

長年自死防止活動を続け、被災地でも仮設住宅訪問をしている僧侶は言う。「生活苦や震災による苦悩で、死んでしまいたいほどつらいと訴える人に、単に『死んではならない』と言っても意味がないのです。『生きていてほしい』と願うところから寄り添いが始まるのですが、それは世の中が『やはり生きていて良かった』と思えるような社会であってこそです」