ニュース画像
「誠」の隊旗を掲げた五重塔院で営まれた法要
主な連載 過去の連載 エンディングへの備え
苦縁―東日本大震災 寄り添う宗教者たち
購読のお申し込み
新規購読キャンペーン
紙面保存版

今こそ再認識したい こころの時代の原点

2013年1月8日付 中外日報(社説)

20世紀が終わるころ、宗教界の人々から「21世紀は"こころの時代"だ」という言葉を聞いた。今年はその言葉をもう一度心に刻むべきではないだろうか。

昨年末の総選挙で民主党は、オウンゴールのような負け方で与党の座を明け渡した。マニフェストとして掲げた公約が、ほとんど実行できなかった。有権者の多くは、自民党をはじめ他の政党に一票を投じた。

なぜ公約が実現できなかったのか。最大の原因は財源不足だ。借金を返すために国債を発行するという悪循環が、以前の自民党時代から続いていた。それに加えて、東日本大震災の復興費用を捻出しなければならなかった。東京電力福島原発の事故対策が、さらなる重荷となった。

低投票率とはいえ、選挙では自民党に期待する結果が表れた。しかし再登板の安倍晋三首相が、打ち出の小槌を持っているわけではない。大型補正財政に、どれだけの効果があるのか。さらに、放射能不安をかき立てた東電福島をはじめ、全国の原発は、以前の自民党時代に建設されたものだ。新内閣になったからといって、即座に解決するものではない。

大阪大で、西洋史の教授から聞いたことがある。「ポルトガルは大航海時代には、スペインと並ぶ経済大国でしたが、現在は小国です。だからといってポルトガルの国民は、現状を不幸であるとは思っていません」

この教授は、今後の日本の在り方について提言したかったのではないか。つまり仏教でいう「少欲知足」である。

いま「少欲知足」への早急な取り組みが求められているのは、節電の問題であろう。昨年初夏のころから、東京の首相官邸近辺で、脱原発を求める"金曜デモ"が盛り上がり、一時は国内54基の原発が全面停止した。

それにもかかわらず、総選挙の結果は大多数の小選挙区で、自民党など"脱原発を急がぬ"政党の候補者が当選した。景気回復の期待も強かったようだ。デモに表された民意と、総選挙の議席配分。これをどう考えるべきか。

停止中の原発の再稼働にさまざまな問題がある現在、太陽光や風力など"再生可能エネルギー"の利用が進んでも、電気料金の値上げは避けられない。企業も家計も、それをいかに受け止めるか。国民全体が"こころの時代"の原点を想起して、少欲知足を心掛ける必要があるのではないか。新年を迎えたのを機に、宗教界からの新たな提唱を期待したい。