ニュース画像
「誠」の隊旗を掲げた五重塔院で営まれた法要
主な連載 過去の連載 エンディングへの備え
苦縁―東日本大震災 寄り添う宗教者たち
購読のお申し込み
新規購読キャンペーン
紙面保存版

風評被害に対抗する三春町と全国の僧侶

2012年12月11日付 中外日報(社説)

福島第1原子力発電所の事故の後、福島県三春町は町内各所で環境放射線量の測定を行い、福島県の測定した県内各地のデータと共に、町のホームページで公開している。

さらに、小中学生のうちの希望者にOSL線量計を配布し、未就学児童には別のタイプの線量計を配って外部被ばく量の測定を実施している。この測定は平成23年7月に始まり、今も継続中だ。

この事業は「"実生"プロジェクト」と呼ばれ、三春町長が代表、地元の臨済宗妙心寺派福聚寺住職である作家の玄侑宗久氏が副代表に就き、東北大の研究者有志らも委員に入って、昨年6月に立ち上げられた。

趣意書によれば、三春町在住の桜守が千年後にも生き続ける桜を育てようと、苗木からではなく、種からの育成(実生)にこだわる姿勢に共感して「"実生"プロジェクト」と名付けたという。原発事故の健康への不安や風評被害などさまざまな影響に晒されている郷土に対する深い思いと危機感が伝わってくる。

同プロジェクトの一環で展開されているのが、本紙(今年6月21日付)が紹介した全国の有志寺院が参加する環境放射線測定だ。三春町内の小中生が身に着けているのと同じOSL線量計を住職や寺族に着用してもらい、日常生活における環境放射線からの外部被ばく量を測定するのが目的。三春町をはじめ福島県内の数値と比較して、原発事故由来の被ばく量を判断。震災・原発の被害に加えて重なってくる風評被害という「心の汚染」に対抗することも目指す。

宗派を超えて103カ寺が協力。その後、若干、参加寺院の出入りがあるが、今後も100カ寺程度の協力を得て進めてゆくという。すでに1回目のデータ集計が終わり、東北大の小池武志氏の分析が公表されている。

調査結果によれば、外部被ばく量は福島県内でも大きな差があり、福島市やいわき市では「原発事故による外部被ばく量の増加が明らか」だが、南相馬市のデータは他都道府県の計測値の高いグループと大差なく、河沼郡の計測値は完全に「日本での自然環境放射線による外部被ばくの範囲内」となっている。

この集計結果を見ても、外部放射線被ばくの「イメージと実態」には落差があるのは確かだ。「心の汚染」もそこに由来する。仏教者有志のネットワークがその汚染の解消に役立つことができれば、大きな社会貢献となるといえるだろう。