ニュース画像
参列者が念仏を称える中、伊藤門主は1292霊の法名が記された御回向帳を1枚ずつ手繰った
主な連載 過去の連載 エンディングへの備え
苦縁―東日本大震災 寄り添う宗教者たち
購読のお申し込み
新規購読キャンペーン
紙面保存版

米国大統領選にみる宗教的「常識」の変化

2012年11月17日付 中外日報(社説)

アメリカ大統領選挙はオバマ氏の再選となった。事前にさまざまな予測があったが、ニューヨーク・タイムズの選挙予測専門家ネイト・シルバーが50州全てで勝敗を的中させ話題となった。むろん占いなどではなく、数理統計モデルに基づいた予測である。予測を100票以上外した専門家もいたし、テレビのコメンテーターなどは形無しだったようだ。

一方、宗教的には今回の選挙は非常に面白い特徴を持っていることが指摘されていた。それは民主党、共和党の大統領および副大統領候補者計4人にWASPが一人もいないということである。

WASPは白人でアングロサクソン、宗教はプロテスタントということである。民主党のオバマはプロテスタントであるが白人ではない。副大統領候補であったバイデンはカトリックである。他方、共和党の大統領候補であったロムニーは末日聖徒イエス・キリスト教会(通称モルモン教)の信者である。副大統領候補であったライアンはカトリックである。

カトリックで大統領になった最初はJ・F・ケネディであるが、今度の選挙の結果、バイデンは初めてのカトリックの副大統領になったことになる。アメリカといえばWASPといわれた時代が遠ざかりつつあるともいえる。また、主流派プロテスタントとは異なる教義を持つモルモン教の信者が大統領候補になったのは、アメリカ社会の宗教に対する寛容の幅広さを物語っているとも見なせる。

こうした選挙結果に限らず、西海岸を中心にヒスパニック系が急速に増えているアメリカ社会は、宗教的にもこれまで常識とされていたような見方では十分把握できない局面も出てきている。シルバーの予測は数理モデルに基づいていたから、こうした社会変化の影響を偏見なしに予測に組み入れた結果であると言っていいだろう。

日本社会も割合こそ小さいが、民族的な多様化は進んでいる。国際結婚もすでに20人に1組以上の割合になっている。その大半は他のアジア諸国の人との結婚である。同じ東アジアであっても、宗教的常識はかなり異なる。中国や韓国の宗教習俗などへの理解も、これまで以上に求められる。

多民族の平和的共存を願う宗教家こそ、こうした宗教的多様化への対応を真剣に考えてほしい。異なる宗教的価値観と付き合う際に、日本の宗教文化への固定観念は時には邪魔になる。現実を柔軟に受け止めないと、自分の価値観を入れ過ぎて予測を大きく外した専門家を笑えない結果になる。