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ポップカルチャー 宗教意識への影響

2012年10月18日付 中外日報(社説)

サブカルチャーやポップカルチャーと呼ばれるものは、それぞれの国の宗教文化を考えるとき、あまり重要な要素とは見なされない傾向がある。一種の遊び的なもの、あるいは表層的な現象という受け止め方になりがちである。

けれども現代の人々がどのようなものから宗教や宗教家のイメージを得ているのかについては、特に若い世代においては、ポップカルチャーからの影響力がかなり大きいことが知られている。

9月29日に國學院大で開催された国際フォーラム「宗教文化教育の射程」は、特に文学と美術を中心的テーマに据えていた。発表の中に今日のポップカルチャーが宗教文化に与える影響についての非常に興味深いものがあった。

アメリカのセントローレンス大のマーク・マクウィリアム教授の「ポップカルチャーと宗教」という発表である。同教授は、アメリカ映画に登場するイエス像の最近における変化と、日本の漫画に描かれたイエス像を対照させながら、ポップカルチャーと現代人の宗教意識との関わりを論じた。

同教授はまずアメリカ人のイエス・キリストのイメージが、1941年にワーナー・サールマンの描いたポートレートに決定的と言えるほど影響されていることを紹介した。500万部以上複製されたこのポートレートは、20世紀末に至るまで、アメリカ人のイエス像の原型の役を果たしてきたという。それは茶色の髪に青い目の白人男性というイメージである。

メル・ギブソン監督の映画「パッション」のイエス像もこの系譜に属する。ところが、最近ではイエス像が多様になり、黒人のイエス、女性のイエス像さえ描かれるようになっているという。

これと並べて論じられたのが、若者に人気の日本の漫画『聖☆おにいさん』に登場するイエス像である。現代日本においてブッダと同居するイエスという破天荒な設定もさることながら、救世主らしくない描き方である。同氏はここに注目したようだ。

宗教や宗教家を題材にした漫画は日本で増えており、外国でも人気を呼んでいる意味を考えていい。視覚に訴えつつ現代の文化・社会状況を取り込んだポップカルチャーが娯楽のように見えて、実は宗教や宗教文化を深く考える題材を提供しているかもしれない。

テキストに即し、テキストの力に頼って宗教の問題を考えようとしてきたのが、これまでの主流である。だが、新しい波がひたひたと押し寄せていることを、宗教家も研究者も見逃してはならない。