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苦縁―東日本大震災 寄り添う宗教者たち
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決して忘れはしない一人一人の生の証し

2012年10月6日付 中外日報(社説)

「亡くなった方々の人生の重みを忘れず、生きていくことが未来につながると信じています」。東日本大震災で甚大な被害を受けた宮城県亘理町にある臨時災害FM局「あおぞら」では、毎月11日にこんな言葉に続いて、300人余りの町内の犠牲者全員の名前が丁寧に読み上げられる。

「死者何人、という数字ではなく、一人一人にそれぞれ大事な人生があったことを伝えたい」。そんな思いから震災翌月に始まった特別番組で、毎「月命日」の午後1時半から1時間余り、亡くなった人々を偲び、地震発生時刻の2時46分に黙祷を呼び掛ける。

この3月には、一周忌を機に区切りをつけるかどうか、長い時間をかけてスタッフが論議したという。「遺族がどんな気持ちで聴いているか」という疑問も出たが、大切な肉親を亡くした人からの「名前を読まれて良かった」との声に、当初の志を貫くことに決まった。そこには自ら被災したスタッフの気持ちもあったようだ。

地元紙『河北新報』は先月、「あすへ」という「震災掲示板」のページに多くの人々の似顔絵を掲載した。少し「違和感」があるのは、それが遺体の顔だからだ。県警から提供された、身元不明者の照会手配の絵だ。

実際の悲惨な遺体から少しほほ笑んだように描かれた柔和な表情、そして「70~90代女性、紺色ジャージズボン、入歯」「50~70代女性、白色腹巻、左足に白と灰色の2枚重ね靴下」など生前の生活を思わせる情報が添えられる。

「名前」とバラバラに切り離されてしまったそれぞれの「物語」を、似顔の描き手もきっと思ったことだろう。なお家族が行方知れずの人が「もしや」と、どんな思いでこの絵を見るかを想像し、一日でも早い故人と遺族との再会を心底から願った。

9月の震災1年半の日には、春まで警戒区域で立ち入りが制限され、被災当時のまま放置されていた福島県南相馬市の海岸部で、大勢の警察官が懸命に遺体を捜索しているのに出会った。津波で壊れた近くの民家の空家の玄関口には、この夏の盆に供えられた提灯と花束が残っていた。

名前と顔を持った掛け替えのない一人一人、その「生きた証」を決して忘れない。それこそが最大の「供養」であり、残った人々の生きる糧でもある。

今月11日が19回目の「あおぞら」特別番組は、インターネット「サイマルラジオ」のサイト(http://www.simulradio.jp/)から生放送で聴くことができる。