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ロンドンの地下鉄と京都の市バス乗り場

2012年9月8日付 中外日報(社説)

世界で初めての地下鉄が走ったのは、1863年のロンドンで、当時の路線は延長6キロ。1905年に電化されるまではSLが引っ張った。乗客はさぞ煙たかっただろう。推理作家コナン・ドイルの小説では、名探偵シャーロック・ホームズが煙たい地下鉄に乗って捜査に赴く場面がある。

そのロンドンの地下鉄にこのほど、車椅子の乗客のためにエレベーターが整備されたというニュースが伝えられた。全駅でなく、3分の2程度の駅だが、整備のきっかけは、パラリンピックに集まる観客への配慮であるらしい。古い構造の駅が多いから、さまざまな苦労があっただろう。

150年近い歴史を誇るロンドンの地下鉄に比べると、昨年開業30周年を迎えたばかりの京都市営地下鉄は"年の功"では足元にも及ばない。だが開業の当初から全駅にエレベーターを完備したという福祉重視の点では、大いに誇ってよいことだ。

昨年7月7日の本欄に記したように、エレベーター設置は当時の舩橋求己市長が、重度障害者のカトリック信徒や、仏教系各大学のボランティア学生らの"お願い"に応えて決断したものだ。ロンドン地下鉄が"銀"なら、京都地下鉄は"金"だろう。

その京都でいま、目立たない福祉への努力が続けられている。京都駅から主な社寺へ行く市バスに乗るには、いったん地下の商店街「ポルタ」へ下りてから、地上の乗り場へ上がらねばならない路線が多い。その乗り場へ通じる扉が重く、お年寄りや重い荷物を持った人には難儀なのだ。

強い風にあおられないように重くしたらしく「ポルタ」から地上へ出る他の扉も重い。それを何とか軽くして、風には強く人には優しくできないかを、京都市が中心となって検討している。

いったん造られた駅前の地下街を改良するには、市だけではなく「ポルタ」やJR西日本、JR東海、近鉄などの意見を聞く必要もある。しかもその成果は、新設工事や撤去工事のように、目に見えるものではない。

それは京都の社寺を巡拝する旅行者に、気持ちよく市バスを利用してほしい、との善意によるものだ。この改善計画は、京都市議会のある議員の提唱で始まった。すでに一部でテスト施工され、軽い力で開閉できるようになり、やがて全ての扉に及ぶという。京都市のこの"陰徳"は、パラリンピックのロンドンに劣るものではない。メダルに届かなくても称賛される"勝者"がいるように。