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苦縁―東日本大震災 寄り添う宗教者たち
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負のスパイラルを阻止するためには

2012年9月6日付 中外日報(社説)

今年は日中国交回復40周年に当たる。幾つかの記念事業が実施されているが、警戒の中で行われているようだ。尖閣諸島問題によって、日中の関係が悪化していることが明らかに関係している。

領土問題は韓国やロシアとの間にもあって、いずれも一朝一夕にはいかない厄介な事柄である。また「遠くの国とは仲良くできるが、隣の国とは仲良くできない」などという言葉もある。

ただ、こうした問題を引き金に、東アジアにおける相互の関係が、負のスパイラルに入っていくことは、絶対避けるように配慮しなければならない。マスコミの報道は、いずれの国も過激な部分のみに焦点が当てられがちになる。それが思わぬ方向へ展開しないとも限らないのである。

ネット時代になって、それぞれの国に多様な意見があることを知る人は増えている。その半面、ネット上で過激な発言をしたり、ことさら反感をもたらすような映像をアップロードする人もけっこういる。仮に一時的であっても、それが現実に反目を強めるような効果をもたらすのも事実である。

領土問題で角突き合って得をすることは何もない。あくまで話し合いを、というのが冷静な判断だが、現実にはなかなかそうもいっていない。愛国心というのは、実に厄介な側面を持っていることは歴史が証明している。

このようなときに宗教界ができることは何であろうか。これまでにも、平和を祈念したり、相互交流に力を入れている教団は少なくない。それによって多様な交流のパイプが築かれているはずである。それを生かすべき時である。具体的な解決策は政治の問題だろうが、互いの反目が広がらないように手だてを考えるというのは、宗教家の課題である。

驚くべきことではないが、宗教団体の中にも対立を煽るような主張をするところもある。しかし、平和や調和、協力というような理念を持った教団は、少なくとも相手側の心を斟酌することの必要性は強調すべきであろう。

過激な主張と行動はどの国にも存在する。国内では愛国者と称賛されたりもするが、相手国からは過激な分子と見なされ、格好のターゲットとなる。相手側に立って己の姿を見ることは難しい。

このことについて気付くように繰り返し説いていくことの重要性は、苦や悩みの根源と真剣に取り組んでいる宗教家ならば、当然思い至るであろう。政治の問題としてではなく、人間性の問題、心の問題として取り組んでほしい。