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苦縁―東日本大震災 寄り添う宗教者たち
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異文化への誤解排し 偏見から自由になる

2012年8月28日付 中外日報(社説)

イスラームの断食月、ラマダーンが明けた。このラマダーンを、「まったく飲食しない」と受け取るとんでもない誤解が今なお広がっており、期間中にあったロンドン五輪でもムスリムの選手らがどうするのかという、いささか場違いな論議があった。

断食と言っても日没から夜明けまで、しかも病弱者や旅行者ら実施が困難な人は最初から除外されている。飲食を断つのは、欲望や誘惑から解放された精神を養うという一種の「修行」的意義こそが大事なのであって、「空腹我慢大会」でもなければ、「どんな宗教的戒律も必ず破る者がいる」といった当たり前の話も的外れだ。

特にイスラームに対して「頑なだ」と思い込む頑なな無理解は西洋の、中でも米国の文化、世界観とそれに色濃く影響される日本のマスコミによるところが大きい。

「アラブの春」革命でエジプトの親米的独裁者を倒して政権に就いた「ムスリム同胞団」は、当初敵対的だった米国の思惑に反して支持が盤石だ。これは、弾圧されながらも長年、貧困者支援など福祉活動を地道に展開してきたからであり、「原理主義テロ集団」などというレッテルは吹き飛んだ。

同じレッテルを張られ続けるレバノンの「ヒズボラ」、パレスチナの「ハマス」も、現政策の是非はともかく、もともと同胞団の兄弟団体の民生組織なのだ。

内戦状態のシリアについても、欧米から流される「アサド大統領は悪、反政府勢力は善」というステレオタイプの理解が横行している。イスラーム少数派のアラウィー派に属する大統領が国民を武力で抑圧するのはもちろん悪だが、反政府勢力の主流であるスンニ派の中には、「アルカーイダ」とのつながりが指摘される部分もあり、先日は反政府軍による虐殺も問題になった。

大統領夫人はスンニ派とされ、問題はそんな単純な「勧善懲悪」ではいかない。「テロ組織の権化」とされるアルカーイダ自体、アフガンで対ソ連軍戦略から米国が肩入れして強化されたことは広く知られている。

そもそも各国の民族性や文化を無視してイスラーム圏を十把ひとからげに捉えること自体、「仏教圏」としてタイやスリランカと日本文化を同一視するに等しい。

「事故で目が覚めた」という原発問題でもそうだが、いくら「マスコミのせいだ」と言っても、物事を正しく見るべき宗教者は偏見から自由でなければならない。「勉強」や知識の多寡の問題ではなく、姿勢の誠実さの問題だ。