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嫌い合っていては平和は生まれない

2012年7月31日付 中外日報(社説)

聖書に「なぜ、兄弟の目にあるちりを見ながら、自分の目にある梁を認めないのか」(マタイ福音書)という言葉がある。神学的解釈はさまざまだが、仏教的には世の中をありのままに見なさい、と意訳しても的外れではなかろう。唐突なようだが、中国との関係を見る場合、それがとても大事な意味を持つように思う。

そう考えたのは先日公表された世論調査の数字による。日本人の回答者約千人中、5人に4人以上が中国に「良くない」印象を持つ。中国人の回答者1627人の半数余が東アジア海域でいずれ軍事紛争が起こると考えており、日本側でも同様の見立てをする有識者が半数近い。日中両国民の相互理解の難しさは分かるが、半数前後の人が軍事的な衝突を予想している事態は尋常ではない。

調査は非営利団体の「言論NPO」が中国メディアと連携して毎年行い、8回目の今回は4~5月に実施。その結果を受け7月に玄葉光一郎外相や中国の程永華・駐日大使らも参加してフォーラムを開いた。調査内容は一部メディアで報道され重複を避けるが、驚いたのは日本人の中国への印象が年々悪化していることだ。中国人の日本への印象も「良くない」が6割強で高止まりしている。

今回は石原慎太郎・東京都知事による尖閣諸島購入の表明が影響していることは容易に想像がつく。しかし、問題はそれだけではなさそうだ。日本人の"嫌中感情"には大国化する中国への脅威など複雑な心理の働きがうかがえる。

日本は一昨年GDPで中国に抜かれたが、各種の指標から中国は平成32年ごろには米国も抜き、軍事力でも米国に対抗し得るという予測さえある。日本でそうした見方は少ないが、欧米では一般的とされる。つまり、中国は10年以内に経済的にも軍事的にも米国と比肩するほどの超大国になるということである。その際見落とせないのは、今もそうなのだが日米両国とも中国との交易を抜きに経済が成り立たないことだそうだ。立場を変えれば中国にも同じことが言えるが、ともあれ、いやも応もないその現実にどう向き合うのか。世論調査で見る限り、危うい方向に歩んでいるように映る。

上述のフォーラムでは、日中両国の国民感情の動向や対立をあおる報道に危機感と懸念が示され、日中両国は相互の信頼と依存関係を複合的に深め合う民間の努力が不可欠だと強調されたという。

仏教が伝来してから1500年近い。長い交流の歴史から生まれた仏教界の知恵に期待がかかる。