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次世代と共有する公共的な利益とは

2012年7月10日付 中外日報(社説)

法人は大きく非営利の法人と営利法人に分類される。公益法人制度改革では公益法人と一般法人に分けられた。公益法人は非営利だが、一般法人にも非営利の法人があり、営利法人の企業であっても高い公益性を持つものが少なくない。他方、旧公益法人や公共法人で公益性に多少疑問符が付くものもある。

企業の公益性は例えば、企業メセナのような本業以外の社会貢献に限るわけではない。それで収益を挙げ、社員、株主に利益を分配する事業自体が、同時に社会全体の利益に貢献しているということはごく普通に見られる。そうした企業を安定的に存続させるのは経営者の社会的責任でもある。

ところで、電力会社による電力供給は公益事業で、電気料金は公共料金である。その経営基盤は公共性、公益性によって完全に支えられている。その点、営利法人であることにはむしろ不安がある。安定した収益は社員・株主に分配され、公共とは無縁の資産投資につながり、他方、「想定外」のリスクは直ちに国民の負担となる。

福島第1原子力発電所事故で経営危機に追い込まれ、1兆円の公的資金投入で、事実上国有化された東京電力はまさに典型だろう。東電の新しい経営陣は公共性の上にあぐらをかくことなく、公益性の重みをもっと自覚してほしい。

宗教法人は非営利の法人として、法人税法では学校法人などと共に「公益法人等」に分類される。公益法人改革で誕生した一般社団・財団法人のうち「非営利型法人」も同じ公益法人等である。

宗教の公益性についてはさまざまな議論があるが、ボランティア活動等の具体的な社会貢献の有無といった問題を超え、宗教が時代に先駆ける新たな価値を創造し、同時に社会の安定に貢献してきたことを重視して、宗教の存在そのものを公益とする見方が有力だ。

だが、この意味の公益性も宗教者本来の在り方の自覚と実践がなければ空虚である。次の時代を開く価値を訴えるためには、批判を恐れない勇気と、異なる主張を持つ人々を説得する熱意、根気が必要とされる。社会の安定、人類全体の福祉を実現するには、目の前の和合だけでなく大きな視野に立った連携も不可欠だ。

私たちの世代と子や孫の世代が共有し得る利益、世代を超えた公益を真剣に考えることが今、求められている。宗教はその方向性を示し得るし、人々の心に訴える力がある。それを訴えるのは時代の大きな転換期に生きる宗教者の責務ではないだろうか。