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格差社会化の進行で追い詰められる家庭

2012年7月5日付 中外日報(社説)

家族の絆の危うさを痛感させる時代である。「無縁社会」はその一断面を表す言葉だが、とりわけ貧困や経済的格差にもてあそばれ、崩壊していく家庭の姿を見るのは悲しい。報道によると平成に入り殺人事件全体に占める家庭内の殺人事件の割合が一昨年、半数を超えた。経済的に不安定な家庭の増加が原因とされている。

もとより家庭は次代を担う子どもたちを育て、人間愛をはぐくむ最小の共同体である。その崩壊に手をこまねいていては、社会の未来が開けるはずはない。

家庭内殺人の殺人事件全体に占める割合は平成元年で約40%だった。その後微増を続け22年に52%を超えた。「無縁社会」が流行語になった年である。同年の殺人事件検挙件数は全国で1029件。重大犯罪以外でも家庭内事件が占める割合が年々深刻化しているという。安息の場である家庭から、物心ともにゆとりが奪われていくさまが透けて見えるようだ。

家庭の"受難"を物語る指標は他にも数多い。国連児童基金(ユニセフ)の先日の報告書では日本の子どもの貧困率が年々悪化、先進35カ国で悪い方から9番目の27位に落ちた。配偶者による暴力(DV)の増加も相変わらずだ。これも経済問題が裏にあるのは周知の事実だが、ここではもう一つ、生活保護を挙げておきたい。

北九州市で一人暮らしの男性が生活保護を受けられず「おにぎり食べたい」と日記に残し、餓死遺体で見つかったのはちょうど5年前だった。保護費の受給を極力抑え込む行政当局の非道な「水際作戦」が批判されたが、その後制度的改善がないままグローバル化や長期不況で受給者数が急増。昨年度は月平均200万人を超えた。

そんな中で最近、人気お笑い芸人の母親の生活保護費受給が問題にされ、今度は受給者への激しいバッシングと子ら親族の扶養義務を求める政治レベルの動きが進む。親族の扶養義務化は「子の貧困の固定化など家庭崩壊を拡大再生産するだけ」との声も聞く。だが、消費税増税も絡み、保護費削減圧力は強まる一途だろう。

冒頭の家庭内殺人事件と生活保護受給者数の増加とは、実は同じカーブを描いてきた。生活保護に看過できぬ不正受給があるとはいえ、就職難や急激な格差社会の進行という構造的問題と切り離せない。正邪の混同は禁物である。

今の世相は時に弱い立場の人々をさらに追い詰め留飲を下げるかのような無慈悲さをのぞかせる。本当なら「火宅の人」を救う知恵をこそ求められているのだが。