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苦縁―東日本大震災 寄り添う宗教者たち
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税社会保障一体改革 現実的な冷静対応を

2012年7月3日付 中外日報(社説)

「政治生命を懸けて」と首相が力を入れ、「税と社会保障の一体改革」の名の下に「社会保障制度改革推進法案」が民主、自民、公明の賛成によって衆院で可決された。だが関連の法律専門家や現場の福祉関係団体職員、そして貧困問題に取り組む宗教者の間でも反対の声が大きくなっている。

例えば、法案の内容は実質的には「社会保障費抑制推進法案」だという日弁連の声明などによる指摘は、自民党による法案条文草案段階から「第1条目的」に「(国、自治体の)財政状況が負担の増大により悪化していること等に鑑み」「持続可能な社会保障制度の確立を」とあることを見ても理解できる。

続いて「自助、共助及び公助が最も適切に組み合わされるよう」などと、国の法律にもかかわらず「自助」つまり「自己責任」や「共助」つまり家族や民間の努力をことさらのように前面に押し出している。また「給付の重点化、制度運営の効率化」を進めて「負担の増大を抑制しつつ」と、基本的には経済効率が大原則であることをうたっている。

さらに批判が集中するのは「主要な財源には消費税を充てる」と明記したこと。少し明晰に分析すれば、社会保障費の財源を「消費増税」による収入に限定するということは、「増税か社会保障抑制か」という「選択」を国民に迫ることによって、結果的に社会保障費上昇を抑えることになる。つまり、増税が嫌だから福祉は抑制するという道に国民を誘導するということで、日弁連などは「極めて姑息な政策」と指弾している。

その「材料」に使われたのが最近の「生活保護」バッシングだ。法制度の仕組みや現場の実態も知らずに、お笑い芸人の極端な例をきっかけに、まるでイエロージャーナリズムのようなヒステリックともいえる報道を繰り広げるメディア。「気分」でそれに同調する動きもある。

しかし、実は日本の人口比の生活保護率1・6%という数字はかなり低いのだ。ドイツ9・7%、イギリス9・3%、フランス5・7%など、制度が違うので単純比較は困難なものの先進国に比べて低率で、米国よりも低いという。

保護受給者が多いことの問題点はむしろ、失業対策や年金など他のセーフティーネットが貧弱で生活保護しか弱者救済策がない不十分な政策だ。「ずるいことをして楽に生活している者がいるから、自分も」と言わんばかりのさもしい姿勢は、宗教者からは最も遠いものだろう。