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苦縁―東日本大震災 寄り添う宗教者たち
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被災地域復興のため指定寄附金の活用を

2012年6月23日付 中外日報(社説)

平成に入って阪神・淡路大震災、新潟県中越大震災、そして東日本大震災と大きな地震が相次いだ。憲法第89条は公金、公の財産を宗教団体などの便益、維持のため供してはならない、と定めているが、政府は阪神・淡路大震災の時、宗教法人の施設復興のために指定寄附金制度を設け、東日本大震災でもそれを踏襲して被災した建物を原状回復するための寄付金について所得税や法人税の優遇措置を導入している。

本堂、本殿など寺社の中心となる建物は規模も大きく、復興には巨額の資金を要する。檀家・信者自身も被災者であり、包括法人からの支援も限度がある。法人の場合、全額を損金に算入できる指定寄附金制度は有効だったようで、阪神・淡路大震災における宗教法人の指定寄附金件数は文化庁宗務課によれば236件に達した。

平成16年の新潟県中越大震災などでは指定寄附金制度は適用されなかったが、新潟県知事を理事長とする財団法人新潟県中越大震災復興基金を通じて、行政から直接ではなく迂回する形で、「鎮守・神社・堂・祠」の復旧のため補助金が拠出され、19年の新潟県中越沖地震でもこの制度が引き継がれている。

「地域コミュニティ施設等再建支援」という名目。不思議なことに寺院は補助対象にならなかった。寺院が地域コミュニティ施設ではないという判断は理解に苦しむが、同基金事務局によると、新潟県中越大震災に限っても同制度の補助金実績は1568件、総額52億円余に及ぶという。

東日本大震災では阪神・淡路大震災を上回る数の寺院、神社が被害を受けたが、指定寄附金の申請手続きは出足が遅い。5月10日までに、宗教法人への指定寄附金として確認されたのはわずか4件だ。

「檀信徒などが仮設住宅で生活しているのに、まだそれどころではない」というのが被災地の宗教者の感覚だろう。上記4件が東北ではなく関東の寺社であるのも多分そのためだ。しかし、説明会に出席し、手続きが煩雑である印象を受けたという話も聞く。個別の寺院・神社にとっては少しハードルが高いかもしれない。

指定寄附金は包括宗教法人を通じてまとめて申請し、集まった寄付金を包括宗教法人が被包括法人に配分することも認められている。せっかくの制度を、包括法人の立場でも大いに活用するべきだろう。地域コミュニティの中心である寺社の復興は被災した地域の復興にもつながるのだから。