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苦縁―東日本大震災 寄り添う宗教者たち
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災害支援の動きは宗教活動の新展開

2012年6月5日付 中外日報(社説)

東日本大震災では多くの被災者が宗教施設に避難した。亡くなった人々の霊を弔うべく宗教者による読経や祈りが求められた。悲しみに沈む人たち、今もなお苦難のただ中にいる人々の心を慰めようとする宗教者の活動も注目されている。仙台では宮城県宗教法人連絡協議会の協力のもと、「心の相談室」が設立され、超宗派による被災者、避難者支援の活動が進められている。

平成7年の阪神・淡路大震災の時にも多くの宗教者が支援活動を行ったが、さほど注目されなかった。宗教者でなくてもできるような支援活動に宗教者が取り組む必要はない、との声も聞かれた。当時は宗教者の支援活動に対する期待があまり大きくはなかった、ともいえる。

阪神・淡路大震災の当時と、東日本大震災後の今を分けるものは何だろうか。

まず第一に、被災地の土地柄ということがある。神戸など大都市地域では地域住民と宗教者の関わりが薄くなりがちだ。東北の太平洋沿岸部ではなお地域社会の共同体が生きており、宗教者の顔が知られ信頼感を抱かれるような環境があった。

第二に、宗教者が過去十数年の間に災害支援活動の経験を積み、有効な支援活動を行う力をつけてきた。第三に、宗教者による災害時の支援活動が必要であり、有効であるという認識が宗教者の間でも一般社会でも広がりを見せてきた。

第四に、災害時だけではなく、普段から孤立しつつ苦難に向き合わなくてはならない人々が増えてきた。「無縁社会」と呼ばれるような事態がそれだ。そしてこうした人々を支援しようとする宗教者が増えてきた。自死念慮者の支援を行ってきた宗教者がその例である。

第五に、一般社会の側でもスピリチュアルな次元のケアや支援が必要だという認識が浸透してきている。特に医療現場でそうだ。緩和ケアの重要性が増し、死のみとりが宗教的な側面を伴うことの認識が深まってきた。死別や喪失の悲しみに沈む人々のためのグリーフケアへの需要も高まり、そここそ宗教者が力を発揮すべき場所だと考える人も少なくない。

東日本大震災後の宗教者の支援活動の高まりの背後に、宗教全体に関わるこうした大きな事態の推移があることに目を向けたい。

災害後の支援活動は新たに必要性が見いだされている普段の宗教活動と地続きのものと考えてよいだろう。