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消費税増税論議に「第二結集」を思う

2012年5月24日付 中外日報(社説)

釈尊入滅の直後、その教えの内容を確認するため開かれた比丘たちの会議が「第一結集」だった。約100年後、2回目の会議「第二結集」が開かれる。議題の一つが、現金による布施を受けることの可否だった。

東部インドの比丘たちは、釈尊の遺訓通り現金否定だったが、西部インドの比丘たちは「現金の受施もやむなし」と主張した。西部インドは交易が盛んで、貨幣経済が発達し、教勢を伸ばすには現金に背を向けてばかりではいられなかった。これにより東インドの比丘たちは上座部、西インドの比丘たちは大衆部と分かれ、派閥形成へ進むことになる。

約2千年後の鎌倉時代に、日本には中国の宋で鋳造された宋銭が輸入された。流通経済を発展させるためである。しかし、庶民の間ではあまり使われなかったらしい。この時代に制作された金属製の仏像に、宋銭と同じ成分のものがあるという。日本での貨幣経済の普及発展は、江戸時代以後のことである。

さて、世界第二の経済大国の時代を経た現在、日本は赤字財政に苦しんでいる。借金を返すために新たな借金をするという悪循環を断つため、野田佳彦首相が政治生命を懸けるとしているのが、消費税の増税である。これに反対を唱えるのが、同じ民主党の小沢一郎元代表だからややこしい。野党の有力者にも、増税への賛成派と反対派があり、増税案が成立するかどうかは微妙である。

この情勢を伝える各紙は、政局を絡めて、政治部記者好みの記事に仕立てようとする。しかし一部経済専門家は断言する。「増税によって赤字財政体質が改善された前例はない」と。さらに「むしろ民間経済の活性化を促す政策をとるべきだ。それによって自然に税収が伸びる。その原資を赤字解消に充てたらよい」とも。

先日の各紙には「4・1%」という数字が大見出しで取り上げられていた。内閣府の調査で、1~3月期の国内総生産(GDP)の伸びが、年率換算で4・1%になると報じたものだ。

円高、赤字決算など、逆風続きの日本経済にも、底堅い民間需要の支えで、なおこれだけの力がある。ここは経済専門家の主張も取り入れつつ、赤字解消策を再吟味してもよいのではないか。

釈尊以来2500年、貨幣は便利な存在として経済発展に寄与してきた。しかし他にさまざまな側面も併せ持っている。野田首相はじめ政界の要人が、判断を誤ることのないよう期待したい。