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お任せ民主主義には危険なわなが潜む?

2012年4月28日付 中外日報(社説)

「なし崩し」という行為は、昨今の流行語「お任せ民主主義」と相性がいいらしい。世の動きに不注意だと物事は少しずつ人々の願いとは逆に運ばれ、気が付くと既成事実化して止められない。不利益を被るのは声なき民衆である。近年、何かにつけその傾向が目立つようだが、一部の識者は「要因の一つは地球規模で拡大するコーポラティズム」なのだという。

広辞苑を引くと「コーポラティズム」は、国が各種団体を協力させ政策を遂行することで、戦前の大政翼賛会を例とする。だが、最近は企業の利益で政策が支配されるという意味に転化している。昨年秋の「ウォール街占拠」と、米国発の若者たちの運動が世界に広がった。その背景説明にも通りやすい意味付けのようだ。

米国は人口の1%が富の4割を占めるというが、9・11同時テロ以降の10年で若者の失業増など社会的ひずみが急拡大した。その仕掛け人がウォール街に象徴される金融資本。市場原理で貪欲に利益を求め、各国の財政規模をしのぐほど巨大化し政治にも影響力を行使する。それが「コーポラティズム」である。欧米諸国の福祉の後退や格差拡大・貧困化が深刻なのはその結果だという。

日本でも大規模なリストラを発表した企業の株価は急騰する。株主には利益だが、リストラされる人々の痛みは見えていない。問題なのは、仏教の共存思想とも正反対なその流れを止めることができない理不尽さである。

米国は経済活動の自由に信仰ともいえる価値を置く国柄で、その行き過ぎの制御にマスメディアも当てにはならなかった。人々が深く認識せぬ間に物事は進み、若者の運動も時遅しでそれを押し返す力になり得なかったそうだ。

流れを止められぬ、という点では日本の原発政策も同様で「コーポラティズム」の「相似形」の感すらある。電力会社を軸に巨額な補助金や利権、天下りなどさまざまな利益誘導を通した政官財などの強固な推進体制が原発を支え、エネルギー分野の選択肢を狭めてきたことは周知の事実である。

本紙は多くの宗教者の「脱原発依存」への願いを報じてきた。福井県の大飯原発再稼働について、本欄も「拙速は禁物」と訴えた。近隣自治体も反対する。だが、なし崩しに再稼働する筋書きは変わりそうにない。拙速な再稼働は原発依存への逆戻りになろう。

「お任せ民主主義」の「罠」とでも言うべきか。本来の民主主義の立ち枯れを懸念する声が、国境を超えて高まっている。