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宗教的少数派の候補 米国社会は寛容か?

2012年4月19日付 中外日報(社説)

アメリカ大統領選挙で、前マサチューセッツ州知事のロムニー氏が共和党候補になることが確実になった。熱心なモルモン教(末日聖徒イエス・キリスト教会)信者で知られ、まだ候補段階とはいえ、歴代大統領がカトリックのケネディを除けばプロテスタントで占められる中では珍しい。

モルモン教は、会員が700万人以上いるとはいえ過去には「異端」視もされ、最近も保守的な南部の牧師から「カルト」呼ばわりされたと伝えられる。そんな宗教的に比較的「少数派」の登場は、同国社会の「寛容度」を測る指標になるのだろうか。

ロムニー氏は長年、同州で教団役員を務め、大都市ボストンの組織トップでもあった。その手腕から教団本部のあるソルトレークシティーの冬季五輪の組織委員会長に就任したのが、政治への入り口だったと報道されている。

だが、巨額の宣伝費を投じた汚い中傷の応酬が定番の候補指名争いの中で、「荒稼ぎに走る資本家」というあながち的外れでもない評判が定着したのに加え、過去に一夫多妻制を認めていたモルモン教を毛嫌いする人々の反発も強かった。

共和党の最大の基盤である「キリスト教右派」から握手さえ拒否された経験があるというが、だからといって「リベラル」「穏健」かどうかは疑問符付きだ。他方で、その保守派の受け皿として一時は有力候補だったギングリッチ氏は、自身はカトリックであるが、ユダヤ系富豪の支持を得、「パレスチナ人は創作された人々」と暴言を吐いて物議を醸した。

結局、「少数派」を許容したというより、スキャンダル暴露合戦による党のイメージダウンを避け、現職オバマ大統領に「勝てる候補」として資金力もあるロムニー氏が残った、との見方が多い。

モルモン教自体がかつて非常に排他的であったとされ、氏自身も選挙戦の中で妊娠中絶・同性婚問題での意見を保守派寄りに変えたと批判されているなど、「寛容」とは懸け離れた印象が強い。

アフガニスタンでの米軍兵士によるイスラーム聖典クルアーン(コーラン)焼却事件。それを謝罪した大統領への非難。同じく米兵による民間人虐殺事件。

あるいは世界最大の核保有国であることは棚に上げて「核開発」に圧力をかけるイラノフォビア(イラン嫌悪症)など、この国にまつわる事象を見ても、「異なる価値」への根強い偏見があり、その社会を動かす基調は、やはり力と政治の論理のように見える。