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苦縁―東日本大震災 寄り添う宗教者たち
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秩序と自由、平等の揺らぎの危険な兆候

2012年4月17日付 中外日報(社説)

社会を方向付ける理念は少なくないが、主要なものに社会の平和と安定を保証する「秩序」と、個(個的集団)の創造性を成り立たせる「自由」と、カネ、モノ、サービスなどの円滑な流通と格差の是正に関わる「平等」の三つがある。

これらのバランスが取れていることが望ましいが、困ったことに秩序と自由、自由と平等は相性が悪く、また上下の格差の固定を招きやすい秩序と格差の是正を求める平等はとかく両立しない。

アメリカの社会は自由を重んじるのが伝統だ。しかし、金融市場の野放しの自由が住宅バブルの崩壊と投資運用会社の倒産を招いた状況の中で、オバマ政権が社会福祉と経済格差の是正を求め、それに対して共和党は新自由主義的な政策を復活させようとして大統領選が戦われている。

わが国ではかつて市民的自由、権利の平等を圧殺した天皇中心的国家主義の秩序が敗戦によって崩壊し、1970年代の初めにかけて資本主義的自由と共産主義的平等との対立が続いた。高度成長の波に乗って前者が優位に立った後、土地バブルとその崩壊後の不況にアメリカ発の世界的不況の波が押し寄せた。さらに東日本大震災と原発事故が重なって、新しい秩序が求められている。それなのに社会の方向が決まらない。

社会の方向を決めるのは政権の仕事である。一般に権力の行使が秩序をつくる。むろんそれには立法・行政・司法の三権が関与するのだが、権力が正当に行使されるためにはまず人権が尊重されなければならず、人権尊重のためにはやはり自由と平等が求められる結果となる。

秩序と自由と平等のバランスが要求される中で、状況ごとにどれを優先すべきかの政治的決断が必要だ。しかしこれはどうもわが国の不得意とするところであるらしく、わが国は決断を先延ばしにしているうちに状況が悪化するという経験を繰り返している。

しかし政権が何事も決められないときには独裁の危険が生じる。実際、こうして昭和初期、日本は軍部の独裁を、ドイツはナチの独裁を招いた。民主主義はとかく衆愚政治になりがちだが、それでも独裁よりははるかにましなのである。民主主義を守るためには忍耐が必要だ。しかしもっと必要なのは賢明な政権で、そのためには賢明な市民が必要だ。

ところで元来、宗教こそ社会のバランスを求めるのではないか。バランス感覚と賢明な判断が問われるのはまさに今である。