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生老病死の伴走者目指す臨床僧の会

2012年4月14日付 中外日報(社説)

日本史上の法師号の初見とされる『日本書紀』用明紀の「豊国法師」は豊(豊前、豊後)出身の医療技術を持った宗教者とみられるが、仏教史をさかのぼって施薬院などの例を持ち出すまでもなく、歴史を通じて仏教は病者の救済に深く関わってきた。

ただ、近代に入って、医学の進歩とともに医療の現場と宗教の距離は大きく開いた。病院に法衣を着た僧侶の姿は場違い――そんな意識は、僧侶自身を含め誰もが抱いている。

しかし、この超高齢化社会において、特に終末期医療の現場で、「こころ」という面から医療が問い直され、医療と宗教の双方から歩み寄りが始まりつつある。東大のCOEプログラムとして始まった「死生学」、京都で最近開かれた「医療と宗教を考える会」などは、この隙間を埋めようとしている。仏教界では仏教ホスピス、ビハーラ、スピリチュアルケアなどで、深い問題意識を持つ実践者も少なくない。

「周死期学」を提唱する僧医・対本宗訓氏が代表である「臨床僧の会・サーラ」もそうした動きの一つ。「臨床」を強調し、僧侶として病院や福祉施設という現場に関わることができるよう、相応の知識と訓練、公的資格の取得をメンバーに要求している。

対本氏のアドバイスに従って、若手僧侶5人が自坊の法務と並行して夜間講座に通い、「ホームヘルパー2級」の資格を得た。すでに僧侶の立場で、がん患者の会に出席したり、グループホームを訪問するなど活動を始めている。

5日には終末期医療、緩和ケアの研究で滞在している英国から一時帰国した対本氏が講師となり、京都市内の寺院で「臨床僧の会」の研究会が開かれた。一昨年秋に発足し、これまで、臨済宗の僧侶が中心だったが、当日は浄土真宗本願寺派関係施設・あそかビハーラクリニックの関係者や曹洞宗の尼僧などが参加した。活動も宗派を超えて広がりを見せているようだ。

僧侶が出入りできる医療の現場はまだまだ限られるにせよ、積極的に一歩踏み出すことが必要というのが研究会の議論の流れ。臨床僧のメンバーからは「僧侶が訪れることに(病院の現場で)思ったほどの拒否感はない」という報告もあった。

「臨床僧に特殊な才能が必要なわけではない。普通のお坊さんが活動できる道筋をつくってゆくことが大切だ」と対本氏。「生老病死の伴走者」となることを目指す会の今後を注目したい。