ニュース画像
「誠」の隊旗を掲げた五重塔院で営まれた法要
主な連載 過去の連載 エンディングへの備え
苦縁―東日本大震災 寄り添う宗教者たち
購読のお申し込み
新規購読キャンペーン
紙面保存版

思いやり予算1兆円 震災の被災者支援に

2012年3月27日付 中外日報(社説)

沖縄の女性有志グループが、米軍への「思いやり予算」を凍結し、東日本大震災の被災地支援に充てるよう求める運動を昨春から続けている。震災後、政策決定された平成25年度までの同予算は総額1兆円近い。1日当たり約5億円。これを被災地に回すと「被災者50万人に3年間、毎月5万円の生活支援ができる」と訴える。

日本の米軍基地の4分の3が集中し、日々基地公害に苦しむ沖縄と、原発事故もあり復旧・復興が遅れる被災地は、共に国策の犠牲者であろう。その痛みが骨身に染みているからこそ、やむにやまれぬ気持で始まった運動だ。

もともと「思いやり予算」は日米地位協定などの法的根拠がない日本側の負担として昭和53年から始まり、平成13年度をピークに漸減傾向だった。だが、震災後の昨年3月末、22年度の負担額約1880億円規模を向こう5年間毎年提供することが決まった。米軍基地職員の人件費、基地内の光熱水費や施設整備費等が対象。過去の同予算総額は4兆円近いが、それは日本側負担の一部にすぎない。

一昨年、米軍嘉手納基地内にできた中学校の整備費用40億円は県内中学校の2倍。400メートルトラックやサッカー場まである。同年、沖縄市に135億円をかけ18ホールの米軍専用ゴルフ場がオープンした。これらは全て「思いやり予算」による(『琉球新報』の記事から)。「県民の反対が強くても米軍が普天間基地の移設に固執するのは、世界でも例を見ないこうした日本側の手厚い負担があるため」という批判が沖縄では強い。

初期仏典によく出てくる「従属」への戒めを思い起こす。

例えば「他人に従属することはすべて苦しみである」(中村元氏訳『ウダーナヴァルガ』)という文言がある。何ものにも束縛されない自由な心で自己の主体性を磨け、という教えだそうだが、国家間の関係にも当てはまるようだ。検証不能な在沖縄米軍の抑止力への執着が外交の従属を生み、思考停止に陥って国を守る他の選択肢を見失わせていないか。思えば原発事故も同様である。経済性と科学技術への「従属」が悲惨な結果を招いた。犠牲者は共に社会の主流から離れた周縁部の人々だ。

冒頭のグループが集めた署名は約4万人。「3・11」にはメンバー2人が福島を訪れ、国会前でも署名を呼び掛けた。「被災地では途方もない復興資金が要るのに国は財政難。米国が真の友人なら、力は弱くても私たちの願いは通じるはず」という女性たちの声は、本土住民に無縁なものではない。