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倫理面から脱原発を選択したドイツ国民

2012年3月17日付 中外日報(社説)

13日付本欄でも取り上げたが、福島原発の事故を受け、昨年6月30日にドイツ連邦議会は2022年までに国内17基の全原発を閉鎖する法案を可決した。政府委託のエネルギー供給に関する「倫理委員会」の提言に基づく。環境や次世代への責任という倫理的側面を重く見た脱原発宣言だった。

そのころ、日本では逆に経済性を重視し、原発廃止の非現実性が強調され始めていた。同日の全国紙には、後に「やらせメール」が発覚した玄海原発の再開を「国が容認へ」という記事が載っている。その違いは何か。国柄が異なると片付けられないように思う。

先日、東京近郊に住む知人が「ドイツのメール友達から交信を断たれた」と訴えてきた。脱原発デモにも参加する知人なのだが「2度の原爆被爆に第五福竜丸、フクシマと何度も核被害を受けていながら、なお原発依存に傾く日本人は理解不能とメル友には見えるようです」と嘆いている。

実はドイツでは10年前、2021~23年の原発全廃を決めていたが、現政権が期限を12年間延長した。福島の事故で再び脱原発を求める世論が沸騰したため元の路線に戻ったわけだ。ただ、この間、同国では自然エネルギーを急拡大させ、その分野で雇用も増やした。原発の是非をめぐる国民的な論争も尽くし、それらが倫理委員会の討議に反映したようだ。

提言には「日本のような技術先進国でも事故は起こる」「(原発を認めるという)短期的な利益優先で生じる負担を背負うのは未来世代」などという文言がある。ドイツの事情に詳しい日本の識者は「提言が出された時点では、日本でその後暴露された東電と政府・官僚機構、メディアとの癒着は知る由もない。分かっていたら違う結論になったかも」と言う。「ああいう国だから」と見くびられても仕方ないという理屈である。

当時、日本の一部メディアは「ドイツは電力を輸入しているから脱原発も容易」と主張した。だが、原発のほぼ半数が停止しても自然エネルギーと省エネでドイツは電力輸出国に転じている。

もとより国情の違いはある。しかし、筆者は民主主義の成熟度において日本は遅れていると痛感せざるを得ない。原発事故発生から約半年間、内閣官房参与を務めた田坂広志氏によると、官邸では事故で首都圏3千万人の避難という想像を絶する事態を想定した(『官邸から見た原発事故の真実』)。そんな悪夢を見ても、原子力が絡む情報公開は依然後ろ向きだ。不可思議な国である。