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自然破壊と災害 古代中国の警鐘

2012年2月21日付 中外日報(社説)

紀元前1世紀の中国、前漢の元帝の時代に副宰相役を務めた貢禹なる人物は、貨幣鋳造のために鉱山の乱開発が行われている現状を憂えて、次のような意見を開陳した。

鉄官には監督の役人と労働者を配置し、山を掘削して銅鉄を採取し、1年間の労働総量は10万人以上に上る。……土地を掘削すること数百丈、陰気の精を消耗させ、地蔵は空っぽになり、精気を包蔵して雲を湧き出させることができず、森林の木を伐採するのに時禁は設けられず、水害や旱魃は往々にしてこのことが原因で発生するのである。

鉄官とは王朝が全国48カ所の鉱山に設けた出先機関。「地蔵」とは大地のクラ。陰陽二気のうち、天に属す陽の気に対して、雲を湧かせ雨を降らせる陰の気は地蔵に蓄えられる、と考えられたのである。

また季節ごとの禁令が「時禁」であって、『礼記』月令篇に孟春の月すなわち1月には「木を伐るを禁止す」とある。

乱開発に伴う自然破壊が自然災害の原因になるという、このような考えは、貢禹に先立って、例えば戦国期以降成立とみられる『管子』の度地篇に「冬に土功(土木事業)を作し、地蔵を発けば、則ち夏に暴雨多く、秋霖(秋の長雨)止まず」と見える。

そしてまた、1~2世紀の後漢時代に起源を有する道教経典の『太平経』。

『太平経』はそもそも于吉なる人物が曲陽(江蘇省連雲港市の西南)の泉水のほとりで手に入れた神書『太平清領書』に由来し、後漢末期に社会を大混乱に陥れた「黄巾の乱」のリーダー張角のバイブルとなったとも伝えられるのだが、その「起土出書訣」と題された巻に次のような興味深い論述がある。

――大地を人間の身体に譬えるならば、水流は血、岩石は骨、土壌は肉に当たるのであって、むやみに身体を傷つけると病気になるのと同様に、「甚だ無状にも共に地を穿鑿(掘削)し、大いに土功を興起して道理を用いず、其の深き者は下は黄泉(地下水脈)に著り、浅き者も数丈」、かくも野放図な土木工事を行うならば、災害を引き起こすことは必定である、と。

乱開発による環境破壊が深刻な問題として議論される今日、ここに示した中国古代人の言説を荒唐無稽だとして、あながちに一笑に付すことはできないのではあるまいか。