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苦縁―東日本大震災 寄り添う宗教者たち
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将来に向けて課題を持ち越したこの一年

2011年12月22日付 中外日報(社説)

社会の大きな出来事が宗教界にもさまざまな形の波紋をもたらすことがある。今年3月に起きた東日本大震災、原発事故は、宗教界が短期的に考えるべき課題や、長期的に考えるべき課題を、数多く提示することになった。

平成7(1995)年3月のオウム真理教による地下鉄サリン事件や、2001年9月の「9・11」は直接に宗教が絡む事件であった。それゆえ、かなり深刻に受け止めた宗教家も多かったが、大震災や原発事故は、宗教への関わりが直接間接さまざまな形で及んできているのが特徴である。

葬儀や死者の供養、祭りの復興といった宗教的儀礼に関わる課題で悩んだ宗教家もいたようだ。被災者たちへの直接的救援や支援、あるいは精神的ケアに関わった宗教関係者も数多く報告されている。宗教家ゆえになすべきこと、あるいは、なせることは何か、自らに問い掛けた人もあろう。

被災地のみならず日本社会全体に生じた動揺や不安に対し、宗教家としてなすべきことは何か、も難しい問いである。

恒例の日本漢字能力検定協会による「今年の漢字」選出で、今年選ばれたのは「絆」であった。大震災以来、絆が大切である、絆を見直そうといった表現を、頻繁に目にするようになった。

「絆」には束縛の意味もあるが、人は人と結び付くことなしには生きていけないというのは、宗教的な見地によるまでもなく、当たり前のことである。絆という言葉が急浮上したのは、その直前に無縁社会といった言葉が流行し、孤独死などが増えている事実が背景にあったと考えられる。いろいろな情報ツールが発達しても、結局は人と人のつながりが基本なのだということも、あらためて感じられたのであろう。

支援活動に際しては、絆と共にネットワークという言葉もよく使われた。宗教界はむしろこの観点で再考すべき課題が数多く提起されたとみるべきである。地域社会のネットワークの中に、宗教はどう関わるか。宗教団体内部のネットワークはどう築くべきか。異なった宗教同士のネットワークはどのような形態が望ましいか。

いずれにしても肝要なのは、日常的努力である。どのようなネットワークも、一朝一夕には形成できない。信頼が伴わなければ、意義あるネットワークにはならない。今回の事態を契機に、新しく形成されたネットワークもある。それを日常的な活動へとつなげていくことは、地道だがこれからの重要な課題の一つである。